青春映画の金字塔、堂々の完結。
想像を絶する前作以上のインフレーションハイスピードバトル。
超人覚醒の全国大会。
最後の強敵は外か内か。
境界線の、その先へ。
ネタバレなし感想。
レギュラーキャラの説明はほぼないので
シリーズ初見だと多少置いてかれる可能性があります。
とはいえそこまで複雑なこともないので、興味ある方はぜひぜひ劇場へ。
ドラマムービーながら大画面大音響の価値ありです。
シリーズファンの方は安心して劇場へ。
相変わらず原作未読視点からの記事になります。
ご容赦ください。
早いものでもう3月。
世間はすっかり卒業シーズンとなった。
街中が着納めの制服だらけなのはそれだけ未来が明るい10代が多いということだろう。
そんな希望に満ち溢れた顔を見ながら、ふと自分の卒業式はどうだったか想いを馳せてみた。
卒業式中に2階から在校生に駄菓子をばら撒いていたS。
式が長いことを予測し大量の週刊誌を仕入れていたA。
壇上で勢いあまって告白して盛大に玉砕したT。
退場しながら爆竹やネズミ花火をばら撒いていたM。
そしていつの間にか校庭のど真ん中に組み上げられたキャンプファイヤーの積み木。
「卒業証書さえもらってしまえばこっちのもの」理論で各方面で若気の至りが蔓延っていた。
そしてその言い出しっぺであった俺は責任を持ってビデオで一部始終を録画していた。
各方面の許可が下りれば公開したいところだが、まぁモザイク処理ばっかになりそうではある。
しかしそんなどうしようもないお祭り騒ぎでも最後にはしんみりしたものだった。
とはいえ今の10代とはジェネレーションギャップがある。
今の若い世代が望むような学生生活ではなかったことは確かだ。
「じゃあ正解はなんだったのよ?!」という俺の愚問にハッキリとしたアンサーを打ち出すような映画が今春、公開される。『ちはやふる -結び-』
少女漫画『ちはやふる』の実写化。
3作目で完結編でもある。
「青春もの」という明らかに俺の趣味のストライクゾーンから掛け離れているシリーズだが
何の因果か以前、前作となる2部作を観たことがあった。
高速カルタで問答無用のカタルシス。『ちはやふる 上の句&下の句』感想。バレあり。 - 高速回転する方舟の片隅で。
結果、かなりどハマりしたのだが
前作2つがテーマとリンクするような綺麗なまとまり方をしていたために少しばかり杞憂ではあった。
「まとまっているシリーズほど続編は難しい」とは通説だが、これを打ち崩すには2つの方法がある。
① 頑張って正面突破。
今までの流れを汲みつつも正当進化してみせるパターン。
前作が傑作であればあるほどに難易度高し。
② 諦める。懸命なパターン。
しかし本作はそのどちらでもなかった。
③ 開き直って全てを無理やりアップグレードさせる。
言ってしまえば作品のベクトルを捻じ曲げ、ジャンルを飛び越えてしまう禁じ手だ。
しかし過去には『ランボー』『エイリアン』『ターミネーター』など、この手でシリーズ最高傑作が生まれた過去もある。
邦画ではなかなか見られないこの「ジェームズ・キャメロン」ルート。
完全に一か八な手法とも言える。
30代が学生服を着るような暴挙だが、ハマればこれほど愉快なこともない。
前作は四捨五入して『アイシールド21』だったが
今作は四捨五入するまでもなく『ドラゴンボール』だった。
そんなワクワクしてくるあらすじ。
『上の句』『下の句』から早2年。「綾瀬 千早」は高校3年生になっていた。
無事進級したのも束の間、自らが立ち上げた「瑞沢高校カルタ部」は大きな壁にぶち当たってしまう。
現在の部員は皆3年生。春からの新入生をなんとかして勧誘しなければ部活が消滅してしまう危機に陥っていた。
「とりあえずカルタの腕前よりビジュアルの良さを売りにしよう!」と千早と太一は戦闘服を着こなし勧誘活動に励むのであった。
当然普通の高校に広瀬すずと野村周平がいれば周りは黙っていない。
有象無象のミーハーが集い、作戦は大成功…したかに思えた。
皆の前でお手本となる模擬戦が組まれ、経験者の1年生と手合わせすることになった千早。筑波秋博。
イキった1年坊かと思いきやそこそこの腕前だったことに、うっかり千早はアクセルを踏み込んでしまう。
結果的に新1年生全員をガン引きさせてしまうのであった。
残った新入生はそんな「筑波 秋博」と「花野 菫」のみ。花野菫。
太一が好き。成り行きで入部。未経験者。
まぁそれでもなんとか部活としての体裁は保てた。
悲願の全国制覇に向けて動き出す「瑞沢高校カルタ部」であった。
しかし千早にはひとつの悩みがあった。
「真島 太一」も同じく無事進級していた。
それどころか学年トップの成績を誇っていた。忘れていたがイケメン、金持ち、運動神経抜群、秀才というモテ度120%な男。
しかしその顔は浮かないものだった。
希望進路が「東大理III」という難易度ウルトラCであったために今まで以上に勉強漬けとなっていた。
一度でも成績を落としてしまえば部活を辞めざるを得ないほどに追い込まれいた。
部長としての責任感、親からのプレッシャー、そして千早に対する恋心。
どれもこれもが重く太一にのしかかってくる。
結果的に行き場を失くしたモヤつきは部員達との温度差を生んでしまうのであった。
「綿谷 新」は相変わらずマイペースだった。というか完全に振り切れていた。
2年最後の大会で千早に「好きや」とド直球な電撃告白をした後に
3年生ながら「千早と太一が羨ましい」と部活設立も即決。
その人脈を駆使してあっという間に5人集め、改めて「カルタで日本一なら世界一や」理論へまっしぐら。
もう絶好調だった。前作でくすぶってた分、やたら行動派に。
迷わない男は強い。
そんな3名を気にしながらも「頂点」は揺るぎなかった。-女王-「若宮 詩暢」
その戦闘スタイルからサイレントクイーンの異名を持つ。
相変わらずのサディスティックさ全開。
覚醒千早でも手が届かない女王の座に君臨し続ける怪物。
-怪物名人-「周防 久志」
ほぼ目が見えないというハンデを背負いながらもオープニングで原田先生を文字通り指先ひとつで降した正真正銘の怪物。
そのミステリアスな風貌と声の小ささから発せられるオーラは伊達ではない。
ちなみに大学7年生。
そんな2人を打倒すべく奮起するカルタ部一同。
しかし入ってきた新入生はどちらも違う意味で曲者。
3年生達はさすがの落ち着きだが、核となる2人はどこか上の空。
片方は恋愛を想い、片方は将来を想う。
それに追い討ちするように菫が太一に「新が千早に告白した事件」を話してしまう。
菫は太一に振り向いてほしいだけだった。
第一、完全に実話だった。
しかしそれは太一の気持ちを決めるには十分すぎた事実だった。「…もう、俺には関係ない」
次の公式戦に太一の姿はなかった。
千早からすれば青天の霹靂。
新に告白されたかと思いきや今度は太一が部活を辞めた。
偶然街中で見かけた際に引退理由を問いただしても
「俺はお前のためにカルタやってた。もうやる意味もない」
とこちらもこちらで告白めいたことを言ってくる始末。もう完全に訳がわからなかった。
何にぶつけるわけでもなく1人涙を流してしまう千早。
新入生とは調和できない。同級生は腑抜けとマイペース野郎ばかり。
そんな状態でライバルでもある「北央高校」に勝てるわけもなかった。
あのエセサディスト須藤が引退したもののさすがの強豪校。みんな大好きベジータ須藤。
なすすべもなく次々と討ち死にしていく仲間達。
このまま終わってしまうのか?
しかし千早は凡人ではない。
前作ラストでは超サイヤ人並みの覚醒を見せつけたことがある超人だった。「こんなところじゃ、終われない…!」
バックでカットインするメインテーマと共にステイサムばりに完全覚醒。千早っぽいステイサム。
読み手の呼吸音と畳上のカルタをシンクロさせて
音ゲー方式で無双していく。カルタがスタイリッシュアクションになった瞬間。
そんな千早を見て他のメンバーも力が入る。
後輩もすっかり協力プレイに魅入られる。
やる気を出すとカルタも上手くなる少年ジャンプ的な展開は健在だった。盛り上がってきたなぁ!!
結果的になんとか判定勝ちでギリギリ関東代表に滑り込む瑞沢高校であった。
一方で太一。
そんなカルタ部を余所目に学校と予備校の自習室を往復していた。
しかしどこかで彼ら彼女らの熱意が伝わってきたのか、自分の不甲斐なさか。
シャーペンの芯を2000円分くらいへし折ってしまう日々が続いていた。「人生賭けたって勝てっこない?人生賭けてから言いなさい」
そんな前作の原田先生の名言がフラッシュバックしたかどうかは定かではないが
太一はとうとうシャーペンそのものをへし折り、とある場所へ出向く。
着いた先は「競技カルタ会館」であった。
たまたま居合わせた須藤に「あいつに殺されてこい」と指された場所を見てみるとそこには周防がいた。
もうなりふり構ってられなかった。原田先生の仇、ひいては自分らの目標でもある名人。しかし使えるものはなんでも使う雑草魂が芽生えた太一は電撃的に弟子入りを志願する。
そんな太一を「面白そう」と弟子に迎える周防。ここに「ゾロ×ミホーク」を彷彿とさせるような師弟関係が誕生した。
熱いなぁ!!
とはいえ周防は高校生の青春なぞ別に知ったことではなかった。
カルタをやり、太一に中華料理を奢らせ、塾講のバイトの助手に任命し、スイーツ食い倒れ旅を敢行。というマイペースな特訓を開始する。
しかしその瞳に何かを感じたのか、塾講のバイト中。
教壇にていよいよ周防の堤防が決壊する。
「塾講やってる自分が言うのも何だが、俺は独学で大学に合格した」
「だから正直お前らを見てると嘲笑しかできない」
「…だがまぁ、そんなことはどうでもいい」
「青春を何に使おうがお前らの自由だ」
「ところで太一…お前こんなとこで何やってんの?」
「さっさと境界線超えてこい」
この自慢から入る自分語りの末のダメ出し。
自分から連れてきておいてこの言い草。
自分が大学7年生なのは完全に棚に上げた物言いだが、だからこそ本音なのだと気付かされた。
一も二もなく教室を飛び出し走る太一だった。高校生は走りがち。
そんな太一を待つ瑞沢かるた部。
無事に関東代表として全国大会に出場していた。
しかも千早の覚醒に当てられたのかすっかりかるたの面白さ、そして協力プレイに目覚めた面々。こうなってくるともう敵はいなかった。
タイトなダイジェスト編集でトーナメントを勝ち上がっていくのであった。
しかし飛ばしすぎたツケか奏が利き腕を負傷してしまう事態に。
このままでは闘えるわけがない。
そんな絶体絶命の場面にジョン・ウー映画ばりのスローモーションで入場してくる漢がいた。潜在能力を解放された太一だった。
心なしか髪型も気合が入っていた。
「強くなって勝ち続ける」ことを決意した千早。
「境界線を飛び越える」ことを理解した太一。
「守り続けた」瑞沢かるた部一同。
もはやこのメンバーの間に言葉はいらなかった。
対する決勝の相手は「藤岡東高校」
新率いる創部1年弱のスーパールーキー校。
新は新で約束通りあっさり勝ち上がってきていた。
ちなみにこちらはダイジェストもないほどの圧勝ぶり。「久しぶりやの…太一」
何の因果か
千早の相手は1年前に敗北を喫した「我妻 伊織」
太一の相手はカルタでも恋でもライバルな新。
相手にとって不足はなかった。むしろ高校3年間の最後に相応しい強敵達だった。
千早はリベンジを果たせるのか?
太一は境界線を越えられるのか?
新はどこまでマイペースなのか!今、青春を全賭けした頂上決戦が幕を開ける!!
…というもの。
前2作で好評だった青春要素はそのままに、それどころか恋愛要素や将来の夢などが追加。
強力な新キャラまでブチ込んできたわけだが
そのどれもが調和する奇跡。
さらには過去作からさりげなく流用される数々の要素。
主人公3人のうち最も影の薄かった太一の存在感の増加。
新の代わりにカルタを辞め、千早の代わりに走る。
という伏線回収とすら言える演出の数々。
緊張感を煽るときはBGMが切られ、盛り上げるときには大音量でかかるその抑揚ある音響。
時折混じるスローモーションやアニメ的な画。
…などなど。
とにかく全方位で無敵と言える本作。
完全に収めるべきところに収めたぐうの音も出ない優等生映画だ。あの名場面も。
10代を客層に据えているおかげもあるのだろうが
その後味の良さは他の映画の比ではない。
…と、まぁ真面目に語ってみたが
本作で一番惹きつけられた要素がインフレ具合だ。
前作でも天才少女である千早、が覚醒しても勝てなかった女王、を完封する新。と明確な実力差があったが
今作ではその比ではない。
シリーズを通して凡人と天才の間には明確な「境界線」が引かれてきた。
千早は前作ラストにて、太一は周防に鍛えられて「超聴覚」をモノにしてようやくそのボーダーを踏めた。
しかし新は決してその限りではない。
数年前からとうに踏み超えている貫禄がある。
そんな新が今回は明確なライバル、そして怪物として君臨することになるわけだが前作同様、今回も穏やかな「チャック・ノリス」のような出で立ち。
どうあがいても絶望しかないが、その上。
折れることない鋼のメンタルも持ち合わせている。
前作で確固たる決意を胸に固めたのもあるが
目標ができて自分の意思をはっきりさせたためだろう。
オープニング早々ヒロインに告白する。
瑞沢高校が勝てなかった北央高校をストレートで降す。
昔馴染みである我妻伊織の告白を幾度も秒で断る。
ブランクがあるにも関わらず、これらを涼しい顔であっさりやってのける様は明らかに全てを超越している。
そしてそのお眼鏡に叶った「藤岡東高校」の面々も尋常ではない。割と雑に招集された部員だが
女王が手も足も出ない新。
千早を倒した伊織。
さらには全日本選手にA級選手2人。
新曰く「このメンバーは最強」とのことだが
それは悪夢の有言実行となり、静かに大会を荒らす。
結果的に最後は「主人公補正」×2、そして原田先生の名言「運命戦は運命じゃない」という伏線のおかげもありいちいち腰に来る名言製造機な先生。
なんとか辛勝する瑞沢高校。
しかしその感動はこれだけの強敵がいたからに他ならない。
トータルすると
「受験」「恋愛」「部活」「友情」が全部綺麗に詰め込まれたデラックス幕の内弁当のような本作。
前半の日常パートの棒読み加減には目を背けたくなるが、それもまぁ本シリーズの特徴とも言えるかもしれない。
老若男女問わず、友達同士でもデートムービーにも文句なしな傑作だ。
観賞後には新の強さの印象が強すぎるせいで
どこかステイサム映画でも観ていたかのような心地も味わえる一石三鳥な映画でもある。
ただ理想的すぎる青春は人によっては劇薬かもしれない。自分の学生時代と相談して決めよう!!
本作の予告↓
余談。
気になる次回作は来月公開の…『パシフィック・リム:アップライジング』
まさかのど真ん中ハリウッド映画だ!!
怪獣とロボットが正面から殴り合う男子の夢を具現化させた超傑作『パシフィック・リム』の続編であり
主人公はジョン・ボイエガ。宇宙の反乱軍から地球の政府軍へ。
おまけに脇に真剣佑。すっかりイメチェン。
このパーフェクトにもほどがある布陣。
眼鏡を外し舞台は畳上から戦場へ。
操るはカルタからロボットへ。
相手取るは文化系高校生から巨大怪獣へ。
とんでもない進路に進んだな!!
いいぞ!!真剣佑!!
燃え死ぬ予告↓
映画「パシフィック・リム: アップライジング」日本版予告 - YouTube
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