「全員殺して、救い出す。」
「殺せ、生き残れ。全面戦争勃発。」
シリーズ最新作は最重量傑作!!
現実以上に非情な「狼」の生き様を見よ!
本記事はネタバレありなのでシリーズファンの方はブラバ推奨です。
出来るだけ前情報なしでどうぞ。
Filmarksにはガッツリネタバレ載ってるんで閲覧注意です。俺は食らいました。
お久しぶりです。
約1ヶ月ぶりの更新となりましたが
皆様いかがお過ごしでしょうか。
俺はというとここ最近泥水を啜りながら砂利を喰らうような生活をしていました。
まぁそんなわけでしばらく趣味の映画鑑賞からも遠ざかっていたわけですが
今夏は話題作が目白押し。
劇場になだれ込むタイミングを見計らっていたのだが
久方ぶり、それも唐突に試写会が当たった。
普段なら疎かになりがちなメールBOX。
しかしそれは見逃すはずもなかった。
なぜなら迷惑メールだらけの受信箱に舞い降りたその招待状からは並々ならぬ殺気が放たれていた。
『SPL 狼たちの処刑台』
夏バテを吹き飛ばすには十分だった。
タイトルの「SPL」といえばこのお方。
そう、ドニーさんですね。
この時点でピンときてない不埒な方々に説明すると
「香港のラストドラゴン」にして
「宇宙最強の男」なわけですが
そんな彼の傑作のひとつ。
『SPL/狼よ静かに死ね』
Googleの予想検索に出てこないほどに物騒極まりない邦題だが、その内容は輪をかけて物騒。
パンチ一発で凶悪犯を廃人にした過去を持つ「ド級暴力刑事」ドニーさんと
絶対に喧嘩売っちゃダメな風貌をしている「元祖動けるデブ」サモハンが
男の意地とプライドを全賭けしてシノギを削る、というもの。
そこに「派手を極めた殺し屋」ウー・ジンまで絡んでくるもんだからまぁ見逃せない。
ひと昔前の女子高生並みにドスをデコり、ファッションは夏休み明けのよう。
しかしその実力はガチ中のガチ。
中盤、路地裏にて電撃披露されるドニーさんとの「特殊警棒vsデコドス」戦は比喩抜きで武器格闘劇の金字塔。
マジでひくほどすごいぞ!!見ろ!!
…とまぁこれらを見れば一目瞭然だが
台風並みに襲いかかってくる殺意。
ふと漂う哀愁。どうしようもなさ。
そんな男が惚れる男…否、「漢」のことを本作では〈殺破狼〉(Sha Po Lang)というわけです。つまりは「SPL」ですね。
まぁ中学時代に見たら生き方を間違えかねないほどの依存性がある傑作なわけですが
そんな名作。続編の話が出ないわけもない。
香港映画あるあるな紆余曲折ありながらも無事、前作から10年ほど経った2017年に続編が公開された。
『ドラゴン×マッハ!』
「おい!!SPLは!?」
とファン(俺含む)は憤った。
前作と話の繋がりは一切なし。
主演2人は(一般的に)知名度があまり高くない。
「ウー・ジン」出るから「ドラゴン」
「トニー・ジャー」出るから「マッハ!」
そんな投げやりの極致ではあったが
内容はそんな不満を遥かに吹き飛ばす〈殺破狼〉ぶりだった。
〈ネクスト「ジェット・リー」〉と言われてしばらく経つウー・ジンが跳び!!
〈10年に一度のアクション俳優〉と呼ばれてしばらく沈黙していたトニー・ジャーが跳ねる!!
カンフーとムエタイがシバき合った挙句に
ラストでは手を組む!!
異次元タッグマッチ。
さらに相手はスーツを着こなす「獄長」
「マックス・チャン」
主役2人を涼しい顔で相手する強さ。
ちなみに『イップ・マン 継承』ではドニーさんと達人組手を演じたお方。
こちらも引くほどの名作。観よう!
前述した通りに前作とはストーリーの繋がりなし。
共通する出演者もいるが別人設定。
シリーズな所以は〈殺破狼〉な漢達の生き様を描く、ということくらいだが
文句なしの大傑作だった。
連続する脳の処理落ち必至なアクション。
苦くて重い哀愁漂うドラマ。
鑑賞後にはお腹いっぱいになりながらも
「いろいろと継承されたな…」と感慨深くなった。
前置きが長くなりましたが
そんな「SPL」が帰ってくる。
それも予想外に早く!!
興奮せざるを得なかった。
今作も前作同様に話の繋がりはなし。
一部出演者が共通するも別人設定。
そして予告から滲み出る殺気と哀愁。
紛うことなき〈殺破狼〉シリーズだった。
映画鑑賞のリハビリには十分すぎた。
ウキウキ気分で会場へお邪魔したのだった。
鑑賞後。
そこには映画に圧し殺された観客達がいた。
無論、俺もその中の1人だった。
つまらなかったわけではない。
想像の上をいく〈殺破狼〉ぶりに殺された。
あまりの重厚感に胸をエグられた。
復帰戦のつもりがオリンピックだったかのような
そんな重さの10種競技なあらすじ。
主人公リーは娘を愛する普通の刑事。
しかし微笑ましい日常を過ごしていたのも今は昔。
立派に育った一人娘からある日、折り入って喫茶店に呼ばれる。
赴いてみれば娘の隣には若い男がいた。
もう嫌な予感しかしないが
「この人と結婚したい。この人の子供を産みたい」と一世一代の告白される。
もちろん祝福するべきだろうが、父親としては複雑。
なにより彼は昔に不慮の事故で妻を亡くしてからも男手一つで必死に娘を育ててきた過去がある。
「そうか、わかった」とは問屋が卸さない。
それどころか間髪入れずに部下に通報。
娘が連れてきた男を未成年との淫行犯として逮捕させるのであった。
明らかに「やりすぎだよ!」と思わざるを得ないオープニングだが
それは娘も同じだった。
そのショックから身籠もっていた子供を中絶。
行き先を告げずに自分探しの旅。
友人にタトゥーを入れてもらう。
とにかくグレにグレた。
そんなときに怪しい一台の車が近寄ってくる。
女性の力では抵抗もままならなかった。
なにより心身ともにズタボロだった。
あえなく攫われてしまうのであった。
当然、その悲劇はリーに伝わる。
娘の友人から「連絡がとれない」と相談されたリーは一も二もなく現地へと急行。
職業柄、なにより父親としての責任として自ら捜査を進めることにする。
もちろん現地の警察もそんな大事件を放っておくはずはなかった。
チュイ。優しくも熱血な刑事。
最近警察のお偉いさんの一人娘と婚約。
リーの熱意に押されたのか持ち前の正義感からか合同捜査に乗り出す。
ひとまず街中の防犯カメラの映像を洗い流す2人。
娘を見つけるも背後には怪しい男がいた。
さっそく居場所を突き止め急行する。
もれなく全員殴って一等賞の暴力捜査の末に、市中引き回し人力チェイスで捕らえる。
しかしその男はただの盗撮犯だった。
もうありとあらゆる怒りに身を任せて再びブン殴るしかないリーであった。
そんな中でも捜査は進む。
しかし平穏無事には済まない。
それどころかただの誘拐事件では終わらなさそうな雰囲気すら出てくる。
どうにも影で臓器売買組織が絡んでいる様子。
なんとか尻尾を掴み末端の人間の居場所を突き止めるも
相手は海千山千の相手。
そこらのチンピラより手強かった。
数の劣勢もあり押され気味な2人。
ようやく得た出掛かりもここまでか…
そのときだった。
アジトのマンションの下にたまたま居合わせた漢。
彼はチュイの同僚の警察官。
なによりムエタイの神でもあった。
名はタク…というかトニー・ジャーだった。
さらにいつもより頭の回転が上乗せされていた。
なんなく状況を察したトニーはリーとチュイの応援を即決!!素手で!!
一応装備していた拳銃もなぜか早々に弾切れ!
この後あっさり拳銃は捨てます。
映画の事情?需要と供給だ!!
かくして「神」のご加護を得た2人。
ここから壮絶なリベンジマッチの幕が上がる!!
映画のジャンル、急遽変更!!
勢いそのままに何故か出張ってきていた親玉とタイマンを張るトニー・ジャー。
主人公を差し置いて!
それもまさかの超優勢。
己に臓器移植が必要なほどに蹴られて殴られて蹴られまくる親玉。
「おいおい、これ映画終わるんじゃねぇか…?」との観客の思いもそこそこに
死ぬほど神の蹴りをキメるトニー・ジャー。
ドニーさん印のソバットもお目見え。神様!
しかしそんなご加護もここまでだった。
相手は臓器売買組織の親玉。無論、ド級の悪人。
近くにいた子供を人質に取る。
こうなっては手は出せない。
しかもそれだけでは終わらない。
なんと無慈悲にもその子供を屋上から突き落とす。
もちろん見過ごせないトニーは救いに自らも屋上から跳ぶ。
おかげでなんとか子供は助けることができた。
しかし己の命までは無理だった。
地面に激突。命を落としてしまう。
まさかのトニー・ジャー、途中退場。
目の前が真っ暗になるとはこのことだった。
それはチュイも同じだった。
哀しみと怒りにくれてしまう。
かくして「もうあいつら絶対に許せん」モードに突入した漢×2。
その瞳は間違いなく〈狼〉だった。
愛する者のため。亡き仲間のため。
無慈悲で無謀な最終戦争が始まるのであった…
どけ!!漢の意地が通るぞ!!
…というもの。
まず言いたいこと。
とにかく全編通して重い。
主人公はシングルファーザー。
愛する1人娘は攫われる。
相手は国際的な臓器売買組織。
トニー・ジャーが死ぬ。
ラストに見つけた娘は還らぬ人。
仇を討ったリーも拳銃で自殺。
軽い気持ちでアクション映画を観にきた一見さんは間違いなく奈落のドン底に突き落とされるだろう。
チョコを食べようと思ったらまるごとカカオ豆が出てきたような苦さがある。
かと言って不味いのか、と問われれば断じてそんなことはない。
世の中、カカオを丸かじりしなければわからないこともある。
なんだ、普段のチョコのありがたみとか!
本作では多々ある「最強」の代名詞の内のひとつ
「トニー・ジャー」を殺すという禁じ手が用いられる。
良い顔だなぁ!!
思えば彼は今まで無謀な行いを有言実行してきた。
やれ「仏像を返せ!」だの「象を返せ!」だのひとつ覚えに叫びながら
その身一つで国際的シンジケートを潰してきた過去がある。
それも一度や二度ではない。
専属cv.浪川大輔という無駄な豪華さ。
結果的にハッピーエンドが多い彼の顔を見て観客はおそらく「今回もなんとかなるな」と思ったに違いない。
しかしその期待はあっさり打ち破られることになる。
普段あんなに強い男が死ぬ。
今回の敵のヤバさ、そしていつも死なずに奮闘してきた彼の懸命さが引き立つ。
彼も人の子。重力には勝てなかった。
まぁ実際にはスケジュール調整やら様々な事情があるのかもしれんが
それでも『マッハ!!!!!!』公開から15年。
身体能力は重力を超える!!
そんな彼をずっと追ってきた身としては涙を禁じ得なかった。
というか基本的に人が死に散らかす本作。
ガワだけ見ればよくあるアジアンアクションだが
その本質はもはや戦争映画に近い。
ここでキャッチコピーの「全面戦争勃発」が効いてくる。
思えば主人公リーが娘のために孤軍奮闘する様はあの世紀の名作『96時間』を彷彿とさせる。
人身売買組織に攫われた娘を救うべく
元CIA特殊工作員リーアムが異国で大暴れ。
必要ならエッフェル塔すら潰すその気概に全国のパパは涙した。
しかしそこはさすがのウィルソン・イップ監督。
終幕を劇的なバッドエンドにすることで一線を画すことに成功した。
後味は苦味一色だが、それを引くほどハードなアクションで包み込む。
おかげでストーリーに散々引き込まれた挙句、観客は心底打ちのめされる。
現実は決して甘くない。
それでも最後に生き残ったチュイだけは悪に屈さず家庭と未来を護り通す。
これが男泣きせずにいられるか!というもの。
いろいろな意味で間違ってもデートには向いてないが
観終わった後には様々な愛の形が浮き彫りになるロールシャッハテストのような作品。
逆に言えばこれを観た後にイチャつければ本物かもしれない。
どうなっても責任はとらないが!
以上、3作目となった〈殺破狼〉シリーズ。
演者が共通しつつも別役という『仁義なる戦い』を思い出すスターシステムを採用しているだけあって
さすがに信頼できる金字塔になりつつある。
おかげでどこかで死んだキャラでも新作で再配置できる強みも得た。
気兼ねなく殺せ、気兼ねなく再登場できる。
そんな最高の「狼」たち。
是非劇場で観ていただきたい。
大ヒットしてくれればドニーさんがカムバックしてくるやもしれないし!!
最大手アメコミに対抗してつくってくれ!!
『殺破狼ユニバース(SPLU)』を!!
そんな希望を抱かせてくれる傑作アクション。
刻め!!網膜と心の自由帳に!!
ある意味詐欺的な予告↓
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