カラーなのにモノクロな矛盾。
検索結果はキャラ通り白黒ハッキリ。
間違えてもデート向きではないぞ!!
アメコミバブル。
もう何度言ってるかわからんが。
とにかくアメコミ映画が市民権を得てから随分と経った。
次々と新たに登場してくるヒーロー達。
さらに昨今ではそれだけじゃ飽きたらず、キャラクターとテーマを残してリブートされることも増えてきた。
例えばスパイダーマン。ここ10年程度で2回の仕切り直し。
さらにバットマン。ここ数年でも数回、映画にドラマに大忙し。
果たしてベン叔父さんとウェイン夫妻は何回強盗に殺されるのか!!『バットマン vs スーパーマン』より。
冒頭でどれだけのファンが「またか…」と思ったことか。まぁ大事なシーンだけど!!!
さらに他の映画との差別化。
原作の特性を活かし、R15指定にするのが近年のトレンドになりつつあったりもする。
『デッドプール』『デッドプール』いろいろバレあり感想!最高にCoolでCrazyな映画だ!!! - 高速回転する方舟の片隅で。
R15指定史上最高の大ヒット。
「俺ちゃんなら当然だよな!!」
『ローガン』ヒュー・ジャックマンの引退作にしてようやくウルヴァリンの本質をフルに活かした傑作。
武器と性質上&本人の性格上、これが大正解。
…などなど、とにかくアメコミ映画と一口に言っても多様化が激しくなっている。
しかしそんなことなどとうの昔に通過していたヒーローが1人。
それが「パニッシャー」だ。
現在までに3度の映画化。
しかもそのどれもが繋がりなし。
リセットに次ぐリセットの被害者でもある。
さらに今回書き殴る『パニッシャー:ウォー・ゾーン』は3回目の実写化にしてR15指定を食らった、というデップーちゃんの8年前にやらかしている奇跡。
時代を先取りしすぎたアダルトヒーローであることは確実だ。
ちなみに本作の公開年は2008年。
DC映画史上最高傑作との呼び声高い『ダークナイト』
さらに現在敵なしの最強シリーズMCUのトップバッター『アイアンマン』
がそれぞれ公開された年でもある。
その中での本作。
同年公開のアメコミ映画の中では「最も浅い」と言われがちだ。
事実『ダークナイト』では「ヒーローの是非」を
『アイアンマン』では「戦争」を
それぞれテーマにしていた。
ひきかえ本作は
「悪人、殺しまくり!」
と行儀の悪さだけは一丁前な有様。
リセット回数といい、公開時期といい不遇に次ぐ不遇だが
「そんなことは知らん!やりたいようにやろう!」
という監督の漢気が見てとれる傑作だ。
ちなみに監督は女性。漢気に性別は関係ない!
とりあえずあらすじの前に「パニッシャー」とはどのようなヒーローか軽く紹介させてもらおう。
「地獄の断頭台」パニッシャー。
本名フランク・キャッスル。
元海兵隊員にして家族を愛する普通の男。
善良な市民として平和に暮らしていたとある日。
家族とピクニックに出かけるも
そこで突然ギャングの抗争が勃発。
フランクの命は助かるものの、巻き添えになった最愛の妻と2人の子供は死亡してしまう。
絶望のドン底に叩き落とされたフランクは悪そのものを恨むようになる。
失うものはもうなにもない。
心にあるのは憎しみと怒り。
かくしてフランクは軍隊仕込みの殺人術を使いこなし、街の悪人達を無慈悲にサーチアンドデストロイする処刑人(パニッシャー)となるのであった。
…というもの。
ヒーローにしては珍しい完全殺戮型な戦闘スタイル。
そして髑髏が描かれたTシャツを着こなすファッションセンス。
さらに素顔を隠すことすらない。
もう漢気の体現者としかいえない。
ちなみに上記にて挙げたヒーローとは妙な縁があったりする。
パニッシャーの初出は『スパイダーマン』のコミックにて。悪人サイドとして初登場するも
その過激なスタイルから人気に火がついて…というパターンだ。
そして「バットマン」とは会社が違うものの
「共に家族を殺されたために立ち上がった」という共通点があるためか『パニッシャー vs バットマン』というコミックが出版されている。ジョーカー嬉しそうだなぁ!!
両者とも原動力は「家族を失った哀しみ」という共通点。
しかしバットマンは「悪人でも絶対に殺さない」
対してパニッシャーは「悪人なら絶対に殺す」
という決定的な違いが浮き彫りになる名作。
殺意を押し殺すバットマンと殺意を奮い立たせるパニッシャーの対比が見事だ。
さらにデップーやウルヴァリンとはそれぞれ
「殺しを厭わないヒーロー」として交流がある。
絶対敵に回したくないなぁ!!
とにかくその過激さとは裏腹に、いやその過激さゆえにかなりの人気ヒーローである。
そのため短いスパンで幾度も実写化されているわけだが
1度目。主演はドルフ・ラングレン。もはやプライベートスタイル。
2度目。相手にジョン・トラボルタ。主役を差し置いてポスターに!!
…とまぁ作品の性質上、エクスペンダブルズな俳優たちを活かすための土台にしかなっていなかった側面がある。
しかし待望の3度目となる本作。
2作目の続編という話を蹴る!
さらに設定もコミックに忠実に!
興行収入も気にせず「R15指定」に!
そこにはまさに「シンプルイズベスト」な圧倒的暴力の権化がいた!!
三度目の正直とはよく言ったものだ!!
前置きが長くなったがそんな本作。
無慈悲で爽快なあらすじ。
今日も今日とていきなりマフィアの談合を襲うパニッシャー。
お年寄りでも容赦なく皆殺しにするサバサバしたヒーロー活動に勤しんでいた。まさに血のサプライズパーティ。
さらには活きのいい若頭“男前”ビリーを工場の粉砕機に突っ込む始末。「そこまでしますかぁ?!」
間違ってもアベンジャーズでは見られないジャスティス感溢れるヒーロー活動を見せつける。
そして「よし、今日も殺したわ」と住所:下水道な我が家に帰るも
実は先ほどのヒーロー活動にて1人の若者潜入捜査官を勢いで殺してしまっていたことが判明。
順風満帆だった悪即斬生活に影が灯り出す。
一方。粉砕機にブチ込まれたビリー。
その自慢の顔面がズタズタになりながらも生きていた。
当然こんな目に遭わせてくれたパニッシャーを恨みに恨みにまくる。
そこで精神病棟に隔離されていた人喰いが趣味の弟「ジミー」を解き放つ。
かくして名前を「ジグソウ」と改め、狂暴にも程がある弟とパニッシャー殺害を企てるのであった。
顔がパズルみたいだからジグソウ。
なかなかお茶目な面もある。
そしてなにより弟想い。
その弟。変人ジミー。
イカれすぎているため非常に危険。
しかし兄には素直。兄弟愛は見所だ!!
その頃。パニッシャー。
「ミスもしちゃったし処刑人辞めよっかなぁ…」とか一瞬悩むものの
件の潜入捜査官の家族に魔の手が忍び寄っている、との噂を耳にする。
さすがにここでなんの罪もない母娘を見捨てるのは漢じゃない。
自分でやらかした失敗。
自分で尻拭いしてこそ大人だ。
地獄のベビーシッター誕生。
追っ手を秒殺し、その影に暗躍するジグソウのことも知る。
「もうこれジグソウの一味皆殺しにしてカタをつけよう!」とパニッシャー継続を即決。
途中でいつの間にか仲間になっていた刑事と共に廃ビルのアジトに真っ向から殴り込む。
「作戦は?」
「アジトに入って皆殺しだ」
文字通りの「血祭り」開催!!
…というもの。
前知識がなければアメコミ映画とは思えないほどの殺伐感。
間違ってもデートムービーには向いてないであろう本作。
しかし他のヒーロー映画とは一線を画すポイントが多々ある。
前述した通り「R15指定」ならではのハードさはもちろんだが
例えば通常アメコミ映画の一作目ではその誕生となる「オリジン」が描かれることが多い。
『アイアンマン』にしろ『スパイダーマン』にしろ
「平和な日常があり、それを脅かすなにかがあり、そしてヒーローとして立ち上がる」という黄金パターンだ。
しかしこれは「早くヒーローが見たい」というせっかちさんからしたら悩ましいポイントでもある。
「日常があるからこそヒーローパートが輝く」ともいえるが、個人的には五分といえよう。
しかし本作。
パニッシャーとなった経緯はオープニングでダイジェストばりのタイト編集で説明される。
もう本編始まったら即!パニッシャー!という潔さ。
なかなか真似できる芸当ではない。
さらに「正義とはなにか」という点においても。
ヒーローとは「善悪」の物語である。
しかし「パニッシャー」においてはそれが非常に曖昧だ。
あくまで悪人限定だが躊躇なく殺している時点で自身も凶悪な犯罪者。
実際、作中でも警察に追われまくってる背景がある。
さらにそのポリシーゆえ、正義の立場であった潜入捜査官も死んでしまう悲劇。
もしこれが他のヒーローだったら。
例えば『シビル・ウォー』では
正義感の違いでヒーロー達が対立してしまった。
それによって悲劇も起きた。
ことメンタル面では俺らとおなじくなにかと弱いこともある。
もし彼らが同じミスを犯したら即引退だろう。
しかしパニッシャーは違う。
「善悪は関係ない」
「所詮俺も犯罪者だ」
「悩んでる暇はない」
ともう開き直りな境地の意志の強さ。
「潜入捜査官とその家族には申し訳ない」
「しかしそれはそれ!これはこれ!」
という精神ですぐに立ち上がる潔さ。
ヒーローに有給休暇は存在しないのだ。
「うだうだ悩んでる暇があるなら引き金を引け!」
この圧倒的な強メンタル。
観ているこっちからすれば
これほど気持ちの良いアクティブさもない。
とにかくどこを切ってもアメコミ映画とは思えない漢気満載な本作。
観賞後の後味はむしろステイサム作品に近いほどだ。
アメコミに詳しくない人はMARVEL出身とは思えないだろう。
個人的には「一切文句なしの完璧な実写化」であると信じて疑わないのだが
「ライバル達の影響」「R15指定」という絞った客層の影響もあり興行収入は振るわなかった本作。
哀しいことに続編もつくられてない現状だ。
しかし天下はアメコミバブル。
そんな状態でMARVELがこんな人気キャラを放っておくわけもなかった。
なんと近年、Netflixにて復活を果たした。
『デアデビル』シーズン2より。
リブートされキャストや細かい設定は変わっているものの、その漢気は相変わらず。
晴れて当時ライバルであった『アベンジャーズ』シリーズの一員となった。
つまりは「スパイダーマン」と同世界上に存在する奇跡。
蜘蛛坊やには荷が重いだろうが!
さらにNetflixの性質上、これ以上ないほどハードでダークにシリアスに。
加えてその人気さゆえに今秋には単独ドラマ化が決定。
本家を喰らうほどのスピンオフを期待してるぞ!
処刑人の休まる日は当分来なさそうだ!!
アガる他ない予告↓
うだつのアガらないtwitter↓