出来る出来ないじゃない、やるんだ!
抗え!!全てに!!
立ち向かえ!!無謀でも!!!
本作はラジオでも語ってるのでぜひご拝聴を↓
#06『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』とか - 映画語ってく枠 - Radiotalk(ラジオトーク)
20代になってからしばらく経った。
世間からすればまだまだ子供ではあるだろうが
近年やはり体力の衰えを感じることも多い。
同年代と再会するたびに、やれ「徹夜ができなくなった」だの「大盛りが食えなくなった」だの「性欲より睡眠欲優先」だの
なにかと景気の悪い話をする割合も増えてきた。
昔はそんな歳上を軽蔑していた嫌いすらあった。
「遠回しに大人になった自慢してんじゃねえぞ」
「斜に構えてればカッコつくと思ってんのか」
「俺はあんなつまらない大人にはならないようにしよう」
そう堅く誓った日のことは忘れていない。
それでも時の流れは残酷。
元来、瞳の奥が濁っていることに定評のある俺だが
ふとした瞬間には自分でもゾッとするほどに目が死んでいることも多くなってきた。
「みんなこうやってなりたくなかった大人になっていくのかもな…」
三連休を三連勤で潰すことにも慣れた帰り道にはそんなことすら考えるようになった。
翌日。
何もなくても朝起きる身体になっている自分に絶望しながらも
外に出てみるとそこには雲ひとつない青空。
このまま部屋で腐っていても仕方ない。
「映画でも観るか。平日で空いてるだろうし」
それにサービスデイ以外の映画もたまには悪くない。
3回無料鑑賞してもおつりがくるほどポイントが貯まっていた自分の暇さ加減に呆れながらも
ちょうど劇場に着いたタイミングで上映していた作品。
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
すっかり疲れ果てていた俺は
「トム主演のハリウッドエンタメ映画」くらいの認識で席についた。
俺はこのとき忘れていた。
彼が右肩上がりに無茶をする、自らの命の尊さすらを無視できるド級の漢であることを。
本作は世界を股にかけるスパイ映画シリーズ最新作。
映画に疎い方でも「ミッション・インポッシブル」というタイトルとメインテーマは聞いたことがあるだろう。
今回で通算6作目になるが、これまでの作品群には紆余曲折があった。
王道スパイサスペンスな1作目。
監督は「ブライアン・デ・パルマ」
新たな時代の幕開けを感じさせる作品。
元々「スパイ大作戦」というテレビシリーズのリメイクだっただけに期待は大きかった。
原作ファンを失望させる展開もなくはないが
後世に残るような名シーンが目白押し。
『M:i:II』
ケレン味全部乗せな2作目。
監督は「ジョン・ウー」
まさかの香港映画界の至宝にバトンタッチ。
前作では一切使用しなかった銃火器に始まり
爆発、バイクチェイス、サングラス、ドロップキック…この世の男が震える要素を詰め込んだ傑作。
続編というよりはひたすらに叩きつけられるジョン・ウー節にシビれるための作品。
否よりの賛否が溢れるが俺は好き。
ラスボスに対してこの芸術的ドロップキック。
雲ひとつない青空が似合うなぁ!
『M:i:III』
骨太シリアスアクションな3作目。
監督は「J・J・エイブラムス」
職人気質な続編ヒットメーカーでもあり
スピルバーグと作風と顔がソックリなエイブラムスへ。
これまた前作とガラッと変わり、王道スパイサスペンスアクションに生まれ変わった。
おそらく「ハリウッド大作」のイメージに最も近い。
良い意味でのテンプレをつくりあげた傑作。
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
傑作チームものになった4作目。
監督は「ブラッド・バード」
今まで「俺様、トム様!」だったシリーズを急遽方向転換。
流行りを取り入れてチームものに。
皆がそれぞれ長所を活かしてミッションに取り組む。
作品としてのまとまりが2ランクほど上になる。
ぐうの音も出ないほどにとにかく面白い。
誰が観ても楽しめるスパイエンタメ大作へ。
この辺りからトムが死に近づいていく。
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
それらを全て内包した5作目。
監督は「クリストファー・マッカリー」
前作の流れを汲んだ傑作チームスパイアクション。
エンタメと骨太さ、王道を逆手に取ったような展開。
『2』を彷彿とさせるケレン味も。
なによりラストバトルをヒロインに譲る暴挙。
代わりにオープニングで飛び立つ旅客機に素手で掴まったが!!
ここで完全にジャッキー化する。
これらを受けた本作。
シリーズ初の監督&ヒロイン続投。
さらに全ての流れを踏襲し、キャラも総出演。
なにより身体の張りっぷりが異次元を超える。
シリーズの良さ全てを内包した前作を過剰なまでにアップグレードしたド級エンタメとなった。
そしてそれは疲れ切った大人たちを活性化する劇薬に仕上がっていた。
言ってしまえば本作はむしろ「ワイルド・スピード」シリーズに近い。
それぞれ異なった作風の「1」「2」「3」
それを受けて各キャラクターを集めた「4」があり
アクションを特盛にした「5」
それらを全てアップグレードした「6」
最新作では互いにジャンルを大幅にはみ出したお祭り騒ぎ。
というか現場の状況を見る限りは四捨五入すればほぼ同じとも言える。
そんなワイルドを超越したあらすじ。
毎度のことながら依頼を受けるトム。
「イーサン・ハント」
四捨五入したらトム・クルーズ。
オープニングで「当組織は一切関与しない」「まぁ頑張ってな」と言われるのもいい加減慣れてきた。
今回のインポッシブルなミッションは世界に3つあるお手軽核兵器製造アイテム「プルトニウム」を奪還せよ、というもの。
まぁ言ってしまえばいつもの仕事だった。
それでもいつもと違うことがあった。
毎度のことながら仕事は完遂するものの、納期がギリギリなことに定評のあるトム。
いよいよ各方面からブチ切れられ「実はこいつこそが裏切り者なんじゃないか」と疑われ始めてしまう。
一応反論してみるものの
「毎回組織に使い捨てられてる割には過酷なミッションをこなしすぎ」というブラック企業特有の難癖をつけられる。
しかし考えてみれば50代、無職なトム。
「俺にはこれしかないんや…」と思ったかどうかは定かではないが
ひとまず周りの反対を押し切り、ミッションへの参加を強引に引き受ける。
それでIMFは納得しても天下のCIAは無理だった。
条件として若手捜査官の「オーガスト・ウォーカー」を監査役としてミッションに連れていけ、と言う。
そこらの若手なら門前払いするところではあったが
漂うオーラ、眼光の鋭さは只者ではない。
有能すぎるスーパーなマンっぽさがあった。
「明らかに裏切りそうだなこいつ」と観客、引いてはチームのメンバーも察するが、そこはトム。
「それで現場に出れるなら」とそれを承諾!
かくしてミッションの幕が上がるが
やはりウォーカーは只者ではなかった。
堅物かと思いきや、やたらと軽口を叩きながらも張り合ってくる。
口先だけかと思いきや、戦闘では敵なし。
「有能なのか?」と思ってみれば上空10000mで気絶。
完全にキャラが掴めなかった。
飲みに誘うべきか迷う先輩と後輩の図。
やきもきしていたら前作から引き続き、MI6からの刺客「エルザ」が電撃参戦してくる。
ひとまず怪しくない程度に車でアクセル全開気味に跳ね飛ばすトムであったが
彼女の狙いもプルトニウム。
自らの濡れ衣を晴らすために必要なのだという。
いつもは目的のために一直線。
それでなんとかしてきた。
しかしここにきて IMF、CIA、MI6、影の武器商人、裏切り者…なんだか話がやたらややこしくなってきた。
最新スマホの説明を受けているおっさんばりに混乱してきたトム。
ひとまず高層ビルの屋上からジャンプしてみるものの特に気は晴れない。
しかも今度の敵も前回から引き続いた「ソロモン・レーン」
シリーズらしくないほど頭が切れる悪人だった。
間に入ってきた「ホワイト・ウィドウ」もどう考えても只者なわけもない。
ちなみに1作目に出てきたマックスの一人娘。
シリーズあるある「女子がみんな強い」も魅せるぞ!
おまけにプルトニウムのひとつは元嫁の「ジュリア」の近くにあるらしい。
最近のトレンド悪夢でもある「元嫁との結婚式が台無しになる」はこれを暗示していたのか、と勝手に合点がいったトム。
こうなればもう完全にヤケだった。
「横文字はなんだかわからん!」
「俺に出来ることは現場で身体を張ることだけだ!!」
50代にして自分の長所であり最大の武器を完全に理解した瞬間だった。
「作戦は?」と聞かれれば「今考えてる!!」と逆ギレするほど追い詰められたが
ここまできたらもう引き下がれない。
世界を救ってやる!!今回も!!
やるかやらないかで言えば完全にやり切る漢、トム。
残機が100あっても足りないほどの一世一代の極限ミッションへ猪突猛進するのであった…
最前線で!!
シリーズが更新するほどに命をオールインするような破滅博打に挑んできたトム。
本作ではいよいよ異次元へ突入する。
・手始めに成層圏からスカイダイビング
撮影のために120回飛んだらしい。
・ビル群をSASUKEファイナルステージばりの障害物競争し、着地時に右足を骨折。
完治に半年かかる大怪我を気合いで2週間で治す。
そして直後に全力疾走する。
渋滞だろうが車間距離は関係なし!
ラストは普通に車と追突して終わるぞ!!
本当にただの事故映像でした。
・クライマックスのド派手アクションの連鎖っぷり。
ぶっつけ本番でヘリを操縦 → 敵を止めるためにヘリにヘリで体当たり → 崖っぷちに墜落 → 目を覚ましたら崖上から敵機が転がってくる → 無情にも激突 → 崖にヘリごと挟まる → もう一度墜落
という映画5本分の大局面がまさに雪崩のように襲いかかる。
さらにこの後、立ち上がって崖上でタイマン。
それだけに留まらずオーバー・ザ・スタローンなクリフハンガー決戦がまだ待ち構えている。
地獄のサービス残業。
この「ヤバい」などとうに超えた「ヤバさ」
キャッチコピーの「不可能が、連鎖する。」は伊達ではなかった。
それはもうぷよぷよばりに連鎖する。
今まで数多くのアクション映画を観てきたが
ここまでこちらの胃もたれをガン無視して食後にフルコースを提供してきた映画を俺は知らない。
「『マッドマックス2』のクライマックスチェイスで一本撮れば面白いんじゃない?」という規模だったが
本作は「過去のクライマックスミッション繋げれば面白いんじゃない?」というレベルだった。
舞台背景が違うだけの兄弟作。
というか今回のトム。
全編、一秒たりとも休まずになにかしらと真っ向から激突しまくっている。
「vsブラック企業」「vs核テロリスト」「vs交通事故」「vsスーパーマン」「vs重力」…
今回は加えて一番の敵でもある「vs加齢」も容赦なく襲いかかってくる。
トムも気がつけば56歳。
もちろんもう若いとは言い難い年齢。
それでも決して弱音を吐かず、ボロボロになりながらも消えそうな希望の光を追いかけ続ける。
心が折れそうな怒涛の畳み掛けを最終的には意地と気合い、そして絆で乗り切る。
これが泣かずにいられるか!というものだ!!
まぁそれに付き合わされるレギュラーメンバーはたまったもんじゃないだろうが
リーダーが最前線で命を賭けまくっている以上、それを無下にはできない。
「ベンジー&ルーサー」
たとえ表情が死ぬしても、だ!!
本作はシリーズの御多分に洩れず、世界を股にかけるスパイアクション映画だが
その本質は非常に身近なところにある。
人間、苦境に立たされると弱気になりがちだ。
むしろ生きているうちの半数以上は苦境かもしれない。
皆それぞれ大なり小なりインポッシブルなミッションに立ち向かう日々だろう。
日々の勉強がツラい、仕事が終わらない、人間関係のストレス、恋愛のあれこれ、金銭問題…
人生そう上手くはいかないかもしれない。
それでも決して諦めずアドリブ満載でもひたすら前に突き進む。
そこをいじられようものなら
「笑わせるな」と笑ってみせる。
トムが何故若々しく第一線を走り続けていられるか、少しわかった気がする。
スパイを夢見る映画好きはもちろんだが
ブラック企業に勤めている方々にこそ観てほしい。
驚いたことに本作ではスパイの華々しさよりもむしろ現場の厳しさにフォーカスしている。
労働基準法が存在しない現場でしのぎを削っている点はほぼほぼイコールと言えるかもしれない。
加えて映画内の世界ではイーサンの活躍が大々的に報じられることもない。
それでもその「誰か」のため、伝わるかもわからんミッションに全力を捧げる。
老若男女問わず何かを気づかせられるはずだ。
とにかく「歳をとったな…」なんてうわごとは成層圏から三桁ダイブしてから言おう!
そう思わせてくれる素晴らしい映画でしたよ。
きっと!!
腹八分目になりかねない予告↓
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