煽られたら、煽り返す。
奪われたら、奪い尽くす。
パンクのカリスマvsハラスメントのカリスマ!
勝負の行方は悪魔のみぞ知る。
センスを武器にシバキ合え!!
『クルエラ』を観ました。
— ばーさーくん (@bebebeberserkun) 2021年8月30日
2人のファッションのカリスマがパンクとハラスメントを武器に正面から大激突する!
キマリまくっている洒脱さは勿論、ゼロディスタンスでバチバチに煽り合うインファイトが最高。
物理じゃなくセンス一本で相手の致命傷を奪りにいく喧嘩殺法が見られるのは #クルエラ だけ! pic.twitter.com/pQCvPeBdEr
原作未見です。
ディズニー好きにはもちろんおすすめ。
『プラダを着た悪魔』好きにもおすすめ。
食わず嫌いしてる人にもおすすめ。
ファン向けの描写あり、でも未見でも全く問題ないです。
面白かったです。
エマ・ストーンが最高です。
「ウォルト・ディズニー・カンパニー」
強力すぎるオリジナルコンテンツに加え、「ピクサー」「MARVEL」「スター・ウォーズ」「Hulu」「20世紀FOX」を出中に収めるエンタメ界のサノスである。
最近では「ソニー・ピクチャーズ」買収の噂すら出てきており、もはやGAFAすら片手で捻れるんじゃないかというレベルだ。
MARVELが買収された時点で貴社の犬となった俺ではあるが、総本山のディズニーにはそこまでの思い入れはない。
唯一の思い出といえば20歳の頃に男5人で2泊3日の旅を謳歌したくらいである。
ただ致死量の酒とタバコを煽ったせいもありやっぱり記憶はない。
話を戻すがマーベル、ひいてはディズニーの奴隷である俺。
当然のようにディズニープラスには加入済み。
シンプルながら鬼のような布陣。
量は他のサブスクに比べて控えめではあるが、その分著作権にモノを言わせた圧倒的質がある。
休日はもっぱらお世話になることが多い。
今日も今日とてMCU百度参りでもしようかとアプリを起動したとき、彼女がいた。
「クルエラ」
なんでも『101匹わんちゃん』の悪役である彼女をメインに据えたオリジンストーリーらしい。
原作からしてどういう物語なのかはさっぱり知らんが、公開当時周りのディズニー好きにはこぞって勧められた記憶がある。
ディズニー版『ジョーカー』(こういう謳い文句はあまり好きじゃないけど)という評判も少し気になってはいた。
無礼ながらも何の気なしに見始めたのだが、気がついたら正座して見ていた。
やはりディズニーは化け物であった。
「エステラ」は芯が強い女の子。
同級生とぶつかり続けても全く折れない反骨精神を持っていた。
それが仇となり小学校を自主退学することになるエステラ。
多少の反省はあったものの、母「キャサリン」との仲は良好であった。
しかしとある事件で唯一の家族である母を失ってしまう。
原因が自分にあると心底落ち込むエステラ。
明日も見えない状況ではあったが、そこで同じく孤児の「ジャスパー」と「ホーレス」に出会う。
幼き彼女らは手を組み主に盗みで生計を立てていくことにする。
そこから10年。
変わらず「家族」として泥棒稼業に精を出す3人であったが、エステラは浮かない顔。
母との「ちゃんと生きる」という約束、ファッションデザイナーになる夢が頭から離れない。
なにより盗みにはもう飽きていた。
その様子を見たジャスパーは誕プレも兼ねてとあるアパレル会社に彼女を就職させることに。
「夢を目指せる!」と喜ぶエステラ。
とはいえ会社では下働きを超えた雑用ばかり。
やはりパンク精神が炸裂するが、そこは天性の強運持ちのエステラ。
そのセンスを買われてロンドンNo.1のファッションのカリスマである「バロネス」の下で働くこととなる。
ロンドンの女帝にしてカリスマ。
夢が叶い、真っ当に生きられるとバリバリ働くエステラ。
その才能は圧倒的であった。
メキメキと頭角を表し、あっという間にバロネスの右腕となる。
しかし運命はそれを許さなかった。
バロネスの首元にあるネックレス。
それはエステラが幼き日に母から譲り受け損なった家宝であった。
「母の死の原因は私じゃない、こいつだ!」と一発で合点がいくエステラ。
母との約束で10年鳴りを潜めていた人格が疼き出してしまう。
「ネックレスを奪い返そう!」
「新たなカリスマとして街に君臨しよう!」
「もうめちゃくちゃやろう!」
そんな彼女を見てドン引くジャスパーとホーレス。
しかし彼女はそれを厭わず新聞記者になっていた同級生「アニータ」と街で見かけたデザイナー「アーティ」を新たに味方につける。
アニータ。旧知の仲。
アーティ。話のわかるナイスガイ。
そして彼女は街の新たなシンボルとして暗躍を始める。
「クルエラ」が顔を出す。
とりあえずバロネスのイベントをことごとく潰して回るクルエラ。
パンクという突風を吹き荒らすカリスマとして君臨することに成功する。
バロネスの愛犬であるダルメシアンすら手懐けていた。
街はすっかりクルエラ一色。
悪くない気分であった。
しかし同時に暗雲が立ち込めていた。
見たことがない様相のクルエラを前に気持ちが離れつつあるジャスパーとホーレス。
なによりやられっぱなしで終わってくれるわけもないバロネス。
件の2人を捕縛した後にクルエラを「自宅ごと焼死させる」という極悪な手段に出る。
絶対絶命の窮地。
しかしすんでのところで飼い犬とバロネスの腹心である「ジョン」に救われるクルエラ。
ジョン。
マーク・ストロングなだけあってキーパーソン。
「なんで私を?」と訝しむクルエラにジョンは真相を語る。
実はエステラはバロネスの娘。
しかし子供を望まない彼女によって殺されかけていた。
それを見かねたジョンは当時メイドとして働いていたキャサリンにエステラを託した。
「あんなクズが実の母?」
「母が母を殺した?」
「じゃあ私ってなんなの?」
二度目の闇堕ちを喰らうクルエラ。
無理もない。ここ数日で事件がありすぎた。
想像を絶するドン底に堕ちてしまう。
しかしまだ胸の内には灯火があった。
そこにあったのは「復讐」の2文字。
これ以上家族は失いたくない。
九点直下で皆と仲直りするクルエラ。
人として堕ち切ってはいなかった。
犬も人も殺さない。
殺すのは「エステラ」だけで十分。
でもあの女だけは許さない!!
かくしてヴィランに確変したクルエラ。
秘策を胸に復讐心を爆発させる。
センスと家族愛を武器にお礼百度参りの幕が上がるのであった…
毎日方々でリアルもネットも問わず炎上案件を見かける世の中。
有名人でなくとも言動に気をつけ萎縮してしまうことがある。
ある意味ではエステラはその象徴とも言えるキャラかもしれない。
本当の己より周囲との同調を優先する。
無論、平穏な暮らしには不可欠なこと。
しかし舐めくさった態度を取られたら話は別。
身内を殺されてるならもっと別だ!
反骨精神を糧に社会を巻き込み大炎上する。
「やるならやろう!とことん!」とパンク全開で突っ走る。
ときには文字通り自らを炎上させる。
このノーフューチャーな身体の張りっぷり。
「でも私こそ未来!」
仲良くなれるかは別にしても憧れてしまうのは俺だけではないはずだ。
元来「拳」「銃火器」「爆発」が大好物な俺だが、本作では全く異なるアプローチでのシバき合いがある。
「センス」だ。
ハラスメントの権化として君臨するバロネスに雇われたエステラはセンス一本でのし上がっていく。
因縁の相手と発覚した後に「クルエラ」として仕掛ける戦争もセンスのマウント合戦。
「バロネスは古い、自分こそが新時代」と言わんばかりにイベントを荒らしていく。
とにかく本作では「センス」が戦闘力と直結する。
反骨精神ありきの場外乱闘を仕掛けるクルエラ。
やっていることは犯罪スレスレだが、誰が見てもお洒落なために民衆の心を鷲掴む。
なにより「これだけは譲れない」という確固たるプライドも見えてくる。
まさにダークヒーローといえる。
対するバロネス。
そんなクルエラの敵ということで容赦がない。
生まれたばかりの娘を殺そうとしている時点でディズニー的にも人道的にも巨悪。
立ち振る舞いは才能に任せた独善的なもの。
芯が強くプライドが高いのはクルエラと同じだが、それは自分を守るためだけ。
事実、センスを武器に戦争を仕掛けてきたクルエラに対してバロネスは「放火」という手を使ってしまう。
この時点で「ダサい」ので負け。
メタ的に見ても観客の敵となってしまう。
さらに常に自分のためにしか乾杯しなかったのに一作講じられて「クルエラのために」乾杯。
これで二敗。
ラストではまんまと謀られて三敗。
ディズニーらしく(合ってる?)華麗に散っていく。
同じくアパレル業界を舞台に新人が圧倒的カリスマを相手取る、というと『プラダを着た悪魔』を連想する。
実際、オーバーラップするようなポイントもあるのだが、そこは天下のディズニー。
二番煎じには終わらせない。
あちらはあくまでも共感できるヒューマンドラマの名作だが、こちらはルール無用の戦争映画に近い。
社会の枠組みの中で戦うか外で戦うかという大きな違いがある。
なによりあちらの編集長はまだ話せる余地があった。
引き換えこちらの長はゴリゴリの武闘派。
仲直りという着地が見えない時点でベクトルは真逆だ。
まぁ『プラダを着た悪魔』の実写化は20世紀FOXが手掛けているので前述の通りディズニーの掌の上の話かもしれないが。
閑話休題。
「家族」という普遍で不変のテーマを下敷きにしながら画力でブン殴るという荒技をやってのける本作。
小さくまとまってもおかしくないが、やはりディズニー。
ファッションをテーマにフリースタイルダンジョンをかますという唯一無二の傑作に仕上がっている。
ジャンルに向かって一直線で走る映画に弱い俺だが、まさにそんな熱気に包まれている。
奇しくもアパレル業界で働いてた経験のある俺には思わず刺さる心の一本となった。
原作未見でもかなり楽しめたので食わず嫌いしている方にもおすすめだ。
もちろんファンであれば「おぉっ!」となるような要素もある。
天下のディズニーらしく老若男女問わず、意外にも路地裏で休憩を過ごす社畜(俺含む)にはぜひ見てほしい。
モノトーンでキメて出勤したくなる傑作ですよ。
余談。
『ジョーカー』との比較について。
「主役が悪人側」「闇堕ちの過程」「キマリまくっているファッション」など共通のテーマが確かにある。
ただ本作を見る限りクルエラは心底悪人ではない。
原作を知らないのでこの後どうなるかはわからんが、ジョーカーほど堕ちてはいない。
ラストでは「エステラは死んだ」とされているものの、彼女自身は誰も殺していない。
ダルメシアン柄のコートも象徴として着ているだけで犬も殺していない。
それどころか愛情すら垣間見れる。
盗みや多少過激な行動もあるにはあるが、やはりジョーカーほど振り切れてはいない。
どちらかといえばクルエラはダークヒーロー。
ジョーカーは徹底したヴィランという違いがある。
あの狂ったピエロであればラストでバロネスを殺していただろうし、屋敷も爆破していたかもしれない。
動物だろうが人間だろうが、ときには自分すら駒にする。
センスではなく圧倒的暴力で混沌を呼ぶ。
ディズニー故にできなかった喫煙も文字通り息を吸うようにしていただろう。
付け加えるが、どちらが上とかではない。
あくまでキャラもジャンルもテーマも違う。
俺は両方同じく楽しめたが、人に勧める際にはひと注意が必要かもしれない。
「ジョーカー好きにクルエラを」「クルエラ好きにジョーカーを」は場合によっては真逆の反応をされるかもしれない。
僕はディズニー女子にジョーカーを勧める勇気はないです。
お節介な余談終わり。