「この刑事、凶暴。ゆえに天職。」
「全てを知ったとき、刑事は一線を越える。」
120点満点なキャッチコピー!
今度のステイサム、不良警官。
ちなみに全てを知るかなり前から一線は超えてるぞ!!
俺が洋画ファンになってから久しい。
思い起こせばそのきっかけとなった作品はいくつかあるが、その中でも最も大きなファクターを占めるのが『ダークナイト』だ。
『バットマン・ビギンズ』から続くシリーズ2作目。
前作から引き続いて「現代社会にヒーローがいたら」を地で行くスタイル。
「ヒーローとはなにか、善悪とはなにか」に鋭く深く切り込んだ、ヒーロー映画の枠組みを超えた超傑作である。
さらに昨今のアメコミヒーローの作風が徹底的にシリアスになった原因ともいえる、まさに革命作でもある。
まぁいまさら詳細を語るまでもないだろがそのうち当ブログでも書こう。
思い入れが強すぎてめちゃくちゃな長文になりそうな気もするが!!
その「とにかくヤバい」映画である『ダークナイト』を傑作たらしめている背景には確実にこのキャラクターがいるだろう。
「ジョーカー」
通称、「犯罪界の道化王子」
究極の劇場型犯罪者にして、なにをしでかすか誰にも読めない徹底されたやべぇやつ。
バットマンを「愉快なおもちゃ」と称し、この上なく愛してやまない最凶のメンヘラサイコストーカー。
「世の中が混沌に陥るのを最前列で見る」ためには自らの命も顧みない究極の絶対悪。
この一から十まで完徹された触れてはならないオーラ。
ときには主人公であるバットマンを食ってしまうほどの存在感。
これ以上ない程に強烈に惹きこまれたのを今でもハッキリ覚えている。
映画を観たのは高校生の頃だったが
一足遅ければ一生を棒に振りかねないレベルで感化されていたであろうことは想像に難くない。
さて。話は変わって本作。
「もしもそんな「ジョーカー」に凡人が憧れてしまった挙句、サイコ犯罪者を気取ってしまったらどうなるか」
そんなことを教えてくれる道徳の教科書的作品だ。
とある事件から刑事を憎むようになった男。
東京を勘違いした大学デビューのようなファッションに身を包み、コードネームを「ブリッツ」と名乗る。
そして卑劣にも刑事を標的に連続殺人を繰り広げる。
相手は映画あるあるの「無能警察」ということもあり次々に殺人を敢行するが…
彼にはたったひとつの誤算があった。
それも誤算というにはあまりにも愚かすぎるミスだった。
なんとそこの所轄にはステイサムがいた。
それも暴力を一切厭わない最強で最凶な刑事として君臨していた。
バットマンと同じく路地裏でエンカウントしたくない漢、No.1。
むしろ躊躇がないだけステイサムの方が厄介な気もする。
当然、凡人がステイサムを「愉快なおもちゃ」として扱えるわけもない。
それどころか無情にも生きたサンドバッグとして心身共にボコボコにされるのであった。
というわけで今回は
「もしもジョーカーが凡人だったら」
「そしてバットマンがステイサムだったら」
という逆ダークナイトこと『ブリッツ』を紹介させてもらいます。
そんな愉快極まりない、そしてあまりにも無慈悲なあらすじ。
イギリスの下町。
やいのやいの騒ぎながら車上荒らしをする若者たち。
しかしそんな間違った野外活動は今夜までだった。
そこにゆったりとホッケースティックを持って近づいてくる漢が1人。
あっ!!ステイサム(武器あり)だ!!
人間というより即死トラップ。
もうこの時点で結果は火を見るより明らか。
全観客の思惑そのままに10秒足らずで若者たちを瞬殺するのであった。
「俺とやるなら武器を選ぶんだな…」
今作のステイサムは現役バリバリの暴力刑事ということを有無を言わせず理解させる最高のオープニングだ。
ちなみにステイサム主演映画で暴力発動までの時間が最も速いのは本作らしい。
そんな寝覚めバッチリなオープニングが明けるとカウンセリングに呼ばれているステイサム。
そりゃそうだ!!
しかしそこで「君の暴力性は刑事に向いていない」と言われようものなら
「これが俺の天職だ」
「クビにしたらなにしでかすかわからんぞ」
そうタバコを吸いながら吐き捨てる。
黙る他ないセラピストであった。
そんな中、件の連続殺人事件が起こる。
悲痛ステイサム。
被害者は全員刑事。
当然、身内には甘い警察は総力を挙げて事件解決に奔走するも、普通の聞き込みでわかれば苦労はしない。
そこでステイサムは独自の方法で捜査することにする。
・開店前のBARに押し入り酒を飲む。
代金を請求されようものなら「開店前なんだろ?」と踏み倒す!!
・情報屋にビール代をたかる。
例え相手が金に困っていたとしても!
・メモすらとらずにビールを飲む。得意げに!
というただの本音のハシゴ酒とも言いたくなる捜査方法だった。
その甲斐もあったのかわからんが、見事犯人を解明。
上記した「ブリッツ」ことただの凡人。
「変わってるね」と言われたらめちゃくちゃ喜ぶ残念な大学生のようなハシャギっぷりを見せている。
こんなカスはステイサム1人で十分だが
ここで倍プッシュ的に相方となる刑事が登場する。
ポーター。
同性愛者ということで周囲から浮いている。
しかし過去に「性犯罪者の急所をバットで潰した」というとんでもない武勇伝を持つ。
その漢気からステイサムと意気投合。
かくしてまさに電撃タッグを組んだ2人。
こんな漢気コンビに凡人は太刀打ちできるのか?
ラストまで命がもてばいい方じゃないのか!?
はみ出し者タッグによる究極の私刑が今、幕を開ける!!
意外にも本作ではステイサム主演映画ながらアクションは少なめだ。
暴力最速記録は打ち立てているが!!
しかし、本編では描かれてないだけで普段から暴れまわっていることは容易に想像ができる。
中盤にてステイサムがブリッツを街中で追いかけるシーンがある。
文字通り命がけのドロケイ。
そこで警察無線で流された命令が
「ステイサムに捕まえさせるな!」
「なにしでかすかわからんから!!」
という物騒さ。
身内を殺しまくりの被害者に同情してしまうほどの焦りっぷり。
日頃の大暴れが目に見えるような良い描写だ。
このようにアクションが少ないからと言って安易に駄作認定はできない。
本作はまた違った面からステイサムの魅力が引き出されているからだ。
それはやたら軽妙で深い軽口だ。
まぁ他作品でもブリティッシュジョークが炸裂しまくっていることは否定できないが
それに輪をかけて本作のステイサムは口を開けば冗句しか言わない。
10言われたら迫力のある1で返す。
まさに漢の中の漢だ。
それが如実に現れるのが終盤。
やっとの思いでなんとかブリッツを捕らえた警察。
取調室にて尋問を行う。ステイサムが。
もうこの時点で嫌な予感しかないが
そこでブリッツが警察相手に連続殺人を行なっていた理由が明かされる。
それはなんと
「過去にステイサムにボコボコにされたから」
というしょうもない理由だった。
逆恨みにしてはあまりに破滅的すぎるが
そんなブリッツを言葉の暴力で取り調べるステイサム。
「お前のことなんざ今の今まで忘れてた」
「お前が俺にボコられてる監視映像見てみんなでチビるほど笑ったぜ」
「ブリッツって名乗ってるらしいな?」
なにも言い返せずに項垂れるしかないブリッツであった。
しかしなんとブリッツは証拠不十分で釈放となってしまう。
それでもそんなことでへこたれるステイサムじゃない。
というか法が通じる優等生じゃない。
逆恨みでも喧嘩売ってきた相手を放置しておくほど草食系でもない。
ここで一休さんも真っ青な規格外なトンチを繰り出すことにする。
保釈されたブリッツ。
あんなにステイサムに煽られたら後には引けない。
そもそもの理由は「ステイサムを殺したい」から始まったこの連続殺人計画。
夜道を1人で歩くステイサムを尾行して殺すことにする。
まぁどう考えても自殺への直行便だが
案の定、ビルの屋上までおびき出されたブリッツ。
当然一対一で敵う相手ではない。
徹底的にボコられにボコられる。
「いや…もう…」
さらにステイサムはそれだけでは飽き足らずブリッツを軽く射殺してしまうのであった。
この場面で引き金を引く刑事。前代未聞だ!
一応、作戦としては「ブリッツを新たな連続殺人の被害者として殺す」とのことだが
側から見れば腹立つから殺したようにしか見えない。
それでもこの裁判所判断を逆手にとった圧倒的俺流ジャッジメント。
「犯人が犯人によって殺される」という刑事自ら事件を迷宮入りに追い込むスタイル。
爽快を超えて納得するしかないオチだ。
ステイサムか承太郎か!!な名シーン。
世の中には絶対的に怒らせてはならない人がいる、という教育的側面も見せてくれる。
とにかく普段のステイサムとはアクションとジョークの割合が逆な本作。
ステイサム好きな友人と語るときもあまり話題に上らない日陰の作品だ。
それでも他では見られない殺意満載の一休さんステイサムが見られるのはここだけだ。
意外にも現職の刑事役を演じているのは本作だけだったりもする。
密かに続編を期待していたりもするのだがまぁ無理だな!!興行収入的に!!
とにかくモヤモヤした夜にでも独りでひっそりと見てほしい名作だ。
調子に乗ったアイツをブリッツに反映させながら!!!
余談ではあるが本作。
この後ワイスピにてステイサムの兄弟役を演じることになるルーク・エヴァンスも出演している。
ちょい役だけど!!!
なんとか取り繕っている予告↓
語れる武勇伝などなにもないtwitter↓