新たなダークヒーロー、誕生。
徹頭徹尾、容赦なし!
骨太スパイサスペンスアクション。
ネタバレなし感想。
予告観てピンときたら是非どうぞ。
期待通り、たまに期待以上の骨太さ。
この手のアクションがお好きなら損はしません。
有象無象のB級とは一味も二味も違うつくり。
…って褒めすぎか!
念のためハードルは低めでどうぞ。
「スパイアクション映画」
レンタルビデオ店に行けばひとつの棚を占拠してるほどの一大ジャンルである。
パッと思いつくのは
『007』シリーズ。
世界一有名なスパイ「ジェームズ・ボンド」の大活躍を描く説明不要の超人気シリーズ。
『ミッション・インポッシブル』シリーズ。
毎回変わる作風、そして右肩上がりにジャッキー化するトムが見所。
その存在感は夏の大作ラッシュでも一際目立つ。
『ボーン』シリーズ。
近代アクション映画の金字塔。
徹底した「リアリティ」を組み込んだストーリーとアクションには全世界が度肝を抜かれた。
未だに月一で観返すレベルの傑作。
『96時間』シリーズ。
「ボーン」シリーズの流れを汲んだ傑作。
極限まで無駄を排除したそのつくりと内容には
あらゆる意味で「プロフェッショナル」を見る。
俺を洋画にハマらせたひとつの要因。
こう並べてみるとわかりやすいが
基本的に主人公達は「伝説」が多い。
全員が最低でも一人前どころか十人前レベルの猛者揃い。
もちろんコメディでもないのに緊迫した状況でオタついているスパイなど見たくはない。
ときに余裕すら垣間見れるその有能ぶりにわくわくする。
しかし本作『アメリカン・アサシン』ではそれらでは描かれなかった部分が見られる。
「スパイが誕生し、一人前になるまで」だ。
そんなミッシングリンクを感じるあらすじ。
「ミッチ・ラップ」は平凡なアメリカ人だった。
それでも今日だけは人生でも特別な日。
旅行先のビーチで彼女にプロポーズ。
そしてそれを見事に成功させた。
幸せの絶頂だった。
そしてそれはずっと続くと信じていた。
しかし悲劇は急に訪れる。
そのビーチで無差別テロが勃発。
平和だった風景は一変する。
銃弾と悲鳴に支配される海岸線。
それは自分達も例外ではなかった。
自身は腹に銃撃を受け重症。
彼女は目の前で命を落としてしまう。
堪え難い深い絶望と哀しみ、そして怒り。
絶頂からドン底に堕ちてしまうミッチであった。
その感情はいつしか復讐心へと変貌する。
平凡な人生はガラリと姿を変える。
様々な格闘技ジムや射撃場へ赴き、己を徹底的に厳しく鍛える日々となる。尽きることのないエネルギーでただひたすらにテロ組織への報復を望むばかりの毎日。
気がつけば独学ながらも諜報員としての素質を高いレベルで身につけていた。
いつしかCIAからもオファーが来るレベルにまで
キリングマシーンへの道を駆け上っていた。
しかし復讐は1人でやり遂げたい一心からそれを蹴り
いよいよ憎き組織への潜入すら成し遂げる。
とうとう目の前には待ち焦がれた恋人の仇。
あと数分あれば悲願が達成する…はずだった。
そこに突入してくる特殊部隊。
その場にいたテロリスト共を皆殺しにし
ミッチの身柄を拘束する。
連れられた先はやはりCIAだった。
テロリストを狙っていたのはミッチだけではなかった。
なにより最初の勧誘から1年半もの間、ずっと監視され続けていた。
凡人なら唐突にCIAに捕らわれたとなればパニックどころの騒ぎじゃないが
仇を目の前で横取りされたミッチは違った。
というかむしろガチギレしていた。
「1年半前にあんたらの助けはいらないって言ったよな?」
「なんで俺の得物、横取りした?」
それに対して「部隊が突入しなきゃあんた死んでたよ」と言われても
「俺なら全員殺せた」の一点張り。
CIA相手にこの反骨心。
当然あっさりと家に帰してくれるはずもない。
しかしまぁその能力は眼を見張るものがある。
「むしろこのメンタルこそ今の現場に必要!」とばかりにエージェントとしてスカウトされるミッチ。
CIAに対してあんまり良い印象を持ってないのは確かだが、既に人生の目標もなくなってしまったのも事実。
なにより悪はまだまだ世界に蔓延っている。
持ち前の正義感からか腕試しか暇つぶしか
もしくはその全てからか。
ひとまずエージェントの養成所入りを承諾するミッチであった。
しかしそこの教官は七癖くらいあった。
スタン・ハーリー。
…というかマイケル・キートン。
相変わらず狂気を孕んだ目でこちらを見据えてくる。
誰に言われるまでもなく鬼教官だった。
地獄の特訓の日々が始まる。
それはそこらにありふれたものではなかった。
具体的には
・朝っぱらから寝床にライフルを連射する寝起きドッキリ
・1vs1の組手に拳銃を持って割り込んでくる。
・VR訓練では恋人の仇を幾度となく映り込ませる
挙句の果てには「感情を殺せ」と
・例の日に撮った元カノとのラブラブビデオを見せつける
当然同様するミッチ。
それに対して「まだまだ甘いな」と
油断した隙にコードで首を絞めてくる。
もう完全に現場よりハードな実習の数々だった。
段違いの説得力。
しかしミッチもそこは意地と「俺が主人公だ」精神でなんとか乗り切る。
引き換えに目は死んだが!!
そしていよいよ現場に出る日がきた。
ただそれは「15kgのプルトニウムを奪還しろ」という合格証書にしてはいろんな意味で重すぎるものだった。
とはいえあのしごきを耐えてきたミッチからしたら別段、驚くものでもなかった。
隣には同期の有能、ヴィクターもいた。ヴィクター。
…ってスコット・アドキンスじゃねぇか!!頼もしい!!
意気揚々と初出勤を飾る新卒たち。
しかしそこは非情なまでに戦場だった。
相手も海千山千のテロリスト。
任務開始5分で計画は失敗。
なんとヴィクターも命を落としてしまう。
相手はプロの犯罪者集団。
映画のようにはいかなかった。
「スコット・アドキンスが秒殺される」という冷酷な現実を叩きつけられてわかりやすく落ち込む面々。
それでもミッチだけは諦めていなかった。
独断で相手を追いかける暴挙に出る。
しかし計画をガン無視した行動の歪みは大きかった。
スタンの身柄が拘束されてしまう。
おまけに同僚のアニカにはスパイ容疑が出てくる始末。
もうわかりやすくヤバかった。
そんな状況でもやっぱりミッチだけは諦めていなかった。
スパイとしての能力は一人前程度でもそのメンタルの合金っぷりだけはプロ顔負けだった。
人生のドン底を深く味わった漢には覚悟とやる気が標準装備されているもの。能力一人前、メンタル十人前な新卒ミッチ。
果たして場数は精神論でなんとかなるのか?
全世界の命運は1人の新人に託されたのであった…
本作の大きな特徴は「ひたすらシリアス」であること。
最近のアクション映画ではほぼお約束のようになった「軽妙なやりとり」や「コメディチックなハズし」などは一切ない。
とにかく全編、息がつまるほどに緊迫している。
それは開始早々のテロの凄惨さからも見てとれる。その様はむしろ戦争映画に近い。
だからこそミッチに深く感情移入できる。
そしてそれはアクションにも波及する。
「ボーン」以降顕著になってきたリアリズムアクションの正統進化と言えるようなもの。
弱点は躊躇なく狙うなどの「らしさ」をさらっと入れてくるあたり非常に信頼できる。
他の映画なら見所になりそうな「潜入パート」を大幅にカットする大胆さも持ち合わせている。
映画的には跳んだり跳ねたりした方が見栄えが良くなるだろうが
命のやりとりをしている状況で格好つけてるわけにはいかない。
むしろ「これくらいプロなら出来て当然」と言わんばかりにあっさり処理していく。
ラスボスすら最期のトドメは非常に簡素なもの。
しかしそれこそが「リアル」と言える。
本作では
・周りの人間も呆気なく死んでいく
・人質に取られたアニカが軽く自決する
・核爆弾は海中に沈めただけでは処理できない
など今までの映画とは全く異なる描写が多い。
だからこそハラハラが止まらない。
それらもおざなりに流されるわけではなく
しっかりとミッチの心に刻まれていく。
「死んだ人もいる」と呟く。信用できる!
一歩違えば「アイドル映画」にすらなりそうな題材をここまで骨太に仕上げたのは「凄い」という他ない。
…ってなんか真面目だな!!今回!!
まぁ当ブログの様相が変わってしまうほどに本作ではおふざけ一切なしだった、ということだ。
さて。本作の一番の見所。
それは上記した中にはない。
いや、もちろんどれも斬新で興奮はするのだが
それらを全て喰らい尽くすキャラがいる。
古くは「バットマン」であり
それを逆手にとった「バードマン」であり
近年では「ヴァルチャー」と
すっかり翼おじさんのイメージが強い。
錚々たるヒーロー映画の来歴。
しかし本作で彼に生えているのは
完全に「悪魔の翼」だった。
基本的にどこかイカレた役柄が多い漢。
当然、本作でも漏れなく狂っていた。
というか狂気が大爆発していた。
全く新しい実戦訓練の数々もそうだが
その狂気がスパーキングするのは中盤。
敵に囚われた際の拷問シーン。
本作の黒幕「ゴースト」は元々スタンの教え子でもあった。
いろいろ経験した挙句、ありがちな闇堕ちをしてしまったわけだが
それでもスタンは見捨てることはなかった。
ある意味では!!
各種の拷問器具をちらつかせるゴースト。
両手を鎖で吊るし上げられ身動きが取れないスタン。
ぱっと見では絶対的にゴーストが優勢。
しかしその眼差しとオーラで場を支配していたのはスタンだった。
いちいち拷問の手際の悪さにダメ出しをし「お前にはいくつかの過ちがある」と地獄の特別講習を開始する。
早速情報を聞き出そうとしたゴーストに対して
「あまりストレートに聞くな…面白くない」
それに逆上してか指の爪を剥がされても「あぁ…いいな…!!」
「指はまだ9本あるぞ…?」
とヘラヘラしながら吐き捨てる。
その後さらに追い討ちをかけられるが
「最後のミスだ…俺に近づきすぎたな」
とゴーストの耳をマイク・タイソンばりに噛みちぎる!!
もう相手を間違えたと理解したゴーストは
「今殺すのはもったいないから…」と涙目ながらにその場を後にしてしまうのであった。「もういいです…」なゴースト。一応ラスボス。
この圧倒的狂気。
奇しくも翌日に『ニンジャバットマン』を拝見したのだが
最強。最狂。最凶。最高。『ニンジャバットマン』最速感想。ネタバレあり。 - 高速回転する方舟の片隅で。
「こいつがバットマン続けてたら10分で話終わるな…」と思わせるほどの狂気を秘めていた。
誰が死ぬか予測できない本作でも溢れる「あ、こいつだけは本気でヤバい」感。
教え子が敵となってしまっても最後まで見捨てずに育成するプロフェッショナルさ。
限りなく無慈悲に近い慈悲深さ。
思えば「プロが新人を育てるスパイ映画」に
あの世紀の傑作『キングスマン』がある。
超がつくほど大好き。そのうちブログで!
あちらの教育係は「コリン・ファース」だった。
プロの余裕と英国紳士が同居する最高のキャラクター。
しかしそれはあの独自の世界観だからこそ存在し得た。
こちらにはあんな優雅に秘密武器を使っている余裕などまるでない。
むしろ「敵を排除するならどんな手でも使え!」と枯れることない雑草魂に満ち溢れている。
「そっちが優雅に紅茶を飲むならこっちは泥水を啜るぞ!!」とでも言わんばかりだ。
どちらが正解ということはないが
観た後になんだかわからないやる気が出てくるのは後者だ。
とにかく終始容赦ゼロな本作。
「仲間を思いやる復讐の鬼」といういそうでいなかった斬新な主人公。
「それを超える現場の鬼」な師匠。
「コインの裏側」な敵。
王道のヒーローオリジンとしても抑えるべきところが全て抑えられている。
「『ボーン』『96時間』を超えた!」
…とは言いづらいが、ぜひシリーズ化してほしい傑作アクションだ。
この手の映画が好きならぜひオススメだ!
余談。
当ブログでもよく自慢させてもらってるが
俺はよく試写会が当たる。
6月上旬はなんと3つ当たったのだが
そのうちの2つ『ニンジャバットマン』と『メイズ・ランナー: 最期の迷宮』の試写日が被ってしまった。
結局、前者を優先したのだが、思えば後者と本作。
どちらも主演は「ディラン・オブライエン」
二夜連続オブライエン祭りも悪くなかったかもしれない。
せっかく当てていただいたのに行けなかったのはちょっと負い目があるので
映画が公開されたら是非観に行こうと思う。
『メイズ・ランナー: 最期の迷宮』
6/15(金).全国ロードショー!
そして本作。『アメリカン・アサシン』
こちらは6/29(木).全国ロードショー!
二週連続でオブライエンを楽しもう!!…って
6/15(金).ロードショー。
『ハン・ソロ』
6/29(木).ロードショー。
どちらも強豪と同日公開じゃねぇか!!
思い切ったな!随分と!!
だがそれでこそ雑草魂だ!!
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復讐のためにCIAエージェントになる男/映画『アメリカン・アサシン』予告編 - YouTube
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