「闘うヒロイン特集」番外編!!
ただの文化系青春スポ根ラブコメ…じゃない。
その実、畳の上を疾走する高速総合格闘技!
男女問わずにがっつり楽しめる傑作エンタメムービー!!!
舐めてかかると大火傷するぞ!!
当ブログにお越しの方はお気づきだろうが俺は低偏差値映画が好きだ。
悪い奴をブン殴って銃をブッ放して高級車走らせてラストは大爆発すれば満点!!という残念な思考の持ち主である。
その趣味から映画で言えば予算が潤沢で制限が緩めな海外映画が好きであり、漫画で言えば燃え滾るような少年漫画が好きだ。
まぁ中学生のまんまと言えば正しいだろう。
そんな趣味なためにどうしても少女漫画には手が伸びづらい。
ステレオタイプなイメージだろうがイケメンと美少女の恋愛が云々よりかは血と汗と火薬が好きな俺。
少女漫画の邦画化にはなおさらのこと食指が動かない。
嫉妬で気が狂いそうになるのもあるが!
当然本作『ちはやふる』も観る気はなかった。
しかし偶然にも新作である3作目公開のニュースが目に入った。同時公開された特報も30秒というお手軽さから何気なく観たのだが。
「濃いキャラ達がフラッシュバック的に紹介される」というエクスペンダブルズ方式なつくりにすっかり魅入られてしまった。
さらに詳しく調べてみると。
新作の公開日は俺の誕生日。
さらにあのいろいろあった『ジョジョの奇妙な冒険』にて億泰を熱演していた新田真剣佑も出てるというじゃないか!ダイヤモンドというより鈍い黒鉛。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』感想。バレあり。 - 高速回転する方舟の片隅で。
親父さんはキアヌも崇拝するサニー千葉。
俄然興味が出てきた俺は早急に過去作2つレンタルして続けて観賞してみた。
結果、頭を撃ち抜かれたような衝撃だった。
2作合わせて4時間弱という上映時間を物ともしないほどにガッツリハマり込んでしまった。
そこには暴力と火薬こそないものの友情と青春が確かにあった。
いろいろ偏見を抱えていた過去の俺をブン殴りたくなる程の傑作だった。
本作は『上の句』『下の句』という二部構成。
もちろん話は繋がっているものの、それこそ和歌の如く独立しているようで綺麗に収束するというつくりだ。
とりあえず本作には3人の主人公がいる。
それぞれの目線で追っていこう。
主人公その1。綾瀬千早。天才かるた少女。
幼少期に出会った綿谷新の影響で競技かるたにどハマり。
後に友人となった真島太一と3人でワイワイしながら熱中するも、新は永世名人でもあるお爺さんの看病のために富山に引っ越してしまう。
太一は太一でサッカーにハマってしまい孤独な日々を過ごす。
そして現在、高校1年生となった千早。
マイナースポーツでもある「競技かるた部」を新しく発足しようと押しが強すぎる勧誘活動に明け暮れるのであった。
そして偶然にも同じ高校に進学してきていた太一を発見。有無を言わさずに引きずり込んだ後に部活発足条件でもある残り3人の仲間集めを開始するのであった。
主人公その2。真島太一。設定だけ完璧男子。
イケメン、金持ち、頭良し、運動神経抜群。
幼少期に綾瀬千早の影響で競技かるたを始めるもそこは年頃の男の子。
サッカーにうつつを抜かしてしまう。
しかし心残りなのも事実。千早が進学する高校を耳にした太一は同じ高校に行くことを決意する。
そこには昔と変わらずに明るく「競技かるた」に励む千早の姿があった。
恋心と下心を押し殺せるほど大人ではない太一はやれやれ感も出しつつ、千早と共に部活発足に乗り出すのであった。
主人公その3。綿谷新。最強メガネ君。
永世名人である祖父の影響もあり「競技かるた」に熱中する少年。
「かるたで日本一になれば世界一も同然」という理由でひたすらに打ち込む日々。
そんな折に千早と太一に出会う。3人仲良く大会を荒らしていたものの祖父の容態に異変が。
地元でもある富山に引っ越してしまう。
そして現在。
祖父の看病をしながらも「競技かるた」への熱は冷めず。
幼き頃に千早に誓った「世界一の夢」のためにも自主トレに励む日々を過ごしていた。
一方。千早と太一。
仲間集めに奔走した結果、ギリギリ3人のメンバーが集まる。
仲間その1。西田優征。Mr.ノンデリカシー。
当初はテニス部所属。しかし誰が見てもセンス皆無だったために退部。
千早と太一にやたら馴れ馴れしいのだが、実は幼少期に対戦済みだった過去がある。
その頃のアダ名でもある「肉まん君」と呼ばれる。
意外にもその実力はなかなか。A級選手でもある。
多少空気が読めないものの明るいムードメーカー。
仲間その2。大江奏。純和風オタク。
大人しめな女子。大和撫子。
呉服屋の娘でもあり「日本人女性とは」というブレない持論を持つ。
当初は方向性の違いから乗り気じゃなかったが、恋愛和歌の話で千早と盛り上がり即、入部。
初心者ながらその知識量で食らいつく。
仲間その3。駒野勉。鉄オタガリ勉。
「部活必須」な校則に従い、本人曰く「人数合わせ」で入部。
全然乗り気じゃないものの千早のピュアすぎる勧誘でちょっと興味が出てくる。
「机くん」という隠れた蔑称があるが競技かるた部の面々は普通にそれで呼ぶ。
全くの素人だがその卓越した頭脳で全てをカバーする。
この個性的なメンバーが徐々に仲良くなり、全国を目指し練習に明け暮れるのが『上の句』の大筋だ。青春だなぁ!!!
途中で青春ものらしくメンバーそれぞれの葛藤ややたら嫌味なライバルの出現、そしてチーム分裂を乗り越えたりな王道的ストーリーではある。
しかしそれをハッキリと描かれることで得られるカタルシスは並大抵のものではない。
例えば太一。万能主人公のお手本のようなスペックとは裏腹にその想いは複雑であった。
競技かるたにおいてかなり重要な「運」が全くないのだ。
そしてその理由は自分でもわかっていた。
小学生時代に学校の授業にて新とかるたで対戦することになった太一。その実力差は圧倒的。しかし千早に負け姿を見られたくないがあまりに新の眼鏡を隠してしまう。
そのことが深い負い目となって負のスパイラルを呼び込んでしまっていた。
そのことを中盤でかるた部の引率者でもある原田先生にブチまけるシーンがある。原田先生。
千早や新や太一にかるたを教えてくれた恩人。
良き理解者として皆を導く。
太一を「まつげくん」、新を「メガネくん」などアダ名で呼ぶ。千早のことは「ちはやちゃん」と呼ぶが!
そのまつげくんの言い分として。
「俺は立派な人間じゃない。隠して、欺いて、出し抜いて。神様に見放されたって当然だ」「俺なんて青春全部賭けたって新より強くはなれない」と。
それに対して原田先生が腰に来る返しをする。「神頼みってのはやること全部やった人間がするもんだ。青春を全部賭けたって強くなれない?まつげくん。賭けてから言いなさい。」
これが突き刺さった人間が何人いるのか。
俺の心がカツアゲされた瞬間だ!!
さらにサブキャラで落ち着いてしまいそうな机くんも。
地区大会決勝にて強豪と相見えることとなった瑞沢高校。
しかし対戦カードを決める作戦会議で肉まんくんがやらかしてしまう。
「なにも相手のトップにこっちのトップをぶつけることはない。机くんで消化しよう」と。
確かに勝負の世界は非情だ。
経験の浅い机くんを活躍させる意味でも有効手ではある。
しかしこの登場人物達はみな高校生。
特に当事者である机くんは納得できるわけもない。
千早に誘われたときのセリフが頭を過ぎる。「机くんじゃないとダメなの!!」という男泣かせなワードが!
それでも結局のところは「人数合わせ」でしかなかったんじゃないか、と失望してしまう机くん。
普段は「勝てばよかろう」な俺ではあるが、このときはすでに瑞沢高校への想い入れがハンパではない。
痛いくらいに机くんに感情移入してしまった。
もはや「よく反抗したぞ!!」くらいに!
しかしそこで太一が「俺もツラいんだよ!!」という勢いに任せた論点ずらしで強引に説得する。これも高校生っぽいなぁ!!
なんとか試合会場には引きずりだしたものの机くんのやる気はゼロ。なにを詠まれようがガン無視を決め込んでいた。
しかしここで千早が立ち上がる。
みんなで合宿をやった際に部員全員で感傷的な気分になった「人は孤独じゃない」という札を音速で弾き飛ばし机くんの顔面に間接ビンタを決め込む!!
それによりチームがひとつに。
そして「漢には負けるとわかっていても闘わねばならないときがある」とばかりに眼鏡をかけ直し強豪相手に奮闘する机くん!!いいなぁ!!青春って!!!
その甲斐もあって強豪を見事打ち破り全国大会出場決定!!
もう王道で絶好調な終わり方だ。
…と思いきや新に不穏な動きが。
勝利報告と過去の謝罪をしに新に電話する太一。
太一「正々堂々とお前に勝ちたい」
新「…俺は…もうかるたはしない…」
はっ!?メガネくんになにが?!
…とここで『上の句』が終わる。
もう続きが気になって仕方ない引きだ。
そんな『下の句』のあらすじ。
真相を確かめるべく新の元へ急行する千早と太一。
新が浮かない原因は祖父の死であった。「自分にとっては祖父がかるたそのもの。それが失くなってしまった。もうやる意味がない」と取り付くしまもない新。
昔馴染みの懸命な説得も心には響かない。仕方なく東京に帰ることにする2人。
それと入れ違いに1人の女子が登場する。若宮詩暢。現競技かるた界の女王。
その佇まいと圧倒的な強さから名実ともに「無音の女王(サイレントクイーン)」と呼ばれている。
新とは個人戦で毎回死闘を演じるライバルでもある。
久々に一戦交える2人だが、詩暢は新の腑抜けぶりに失望してしまう。
そして東京。
全国大会へと駒を進めた瑞沢高校かるた部。
当然今までとは桁が違うレベルの強豪揃い。
がっつり修行に励むことにするがどうにも千早の様子がおかしい。
どうやら件の「女王」のことを知り個人戦でしのぎを削りたい、とのこと。
個人戦は団体戦の後に開催される。本来なら両立は可能なのだが困ったことに「女王」は左利き。
対策として戦闘スタイルを改めなくてはならない。
それは団体戦を半ば諦めことを意味する。
しかしサイヤ人メンタルな千早としてはどうしても強えやつと戦いたい一心。
そんなこんなで合宿にも身が入らない。
そんな千早を見兼ねた太一は千早を切り捨てることを決心する。
再びバラバラになってしまうかるた部の面々。
「おいおいマジか!?」という観客も声もそこそこに迫る大会。
まぁ結局は皆収まるべきところに収まるのだが、そのきっかけをつくりだしたのは『上の句』にて勘違いドSっぷりを爆発させてた須藤暁人だ。嫌味な強敵だったが覚醒千早に瞬殺された。
千早を呼び出した暁人。
また勘違い爆発か…と思いきや「そんな弱いお前に負けた覚えはねぇ」とぶっきらぼうに門外不出のデータブックを千早にプレゼントする、というわかりやすさ。ただの踏み台からベジータになった瞬間。
これにより「あぁ…みんな頑張ってるんだ…」と至極当たり前なことに気がついた千早。
そして豪雨の中、太一に謝罪するという直球すぎる展開。
しかしこういう気恥ずかしい描写が入ると強くなるのが高校生。
原田先生の「団体戦こそ個人戦」という極論に近い後押しもあり、全てが吹っ切れた瑞沢高校は負い目なしで全国大会に出場することになる。
…というもの。
観賞前には思いがけもしなかった程にド直球なスポ根青春ものなのだが、特筆すべきはその落とし所だ。
瑞沢高校の面々は団体戦にて負けてしまうが、皆それぞれ楽しさに目覚めかなり満足する。
千早は迎えた個人戦で「個の力」のみでのし上がってきた女王に敗れてしまうものの「超人の世界」へ歓迎される。
さらに隠れて観戦しにきていた新も。
瑞沢高校の「団体戦」を目の当たりにし、過去の「みんなでやる楽しいかるた」を想う。そして新しい「理由」が芽生える。
もう全てが最高の着地点に終始する結末。
これぞ王道青春ものだ!!!
まぁラストに新に向けて「俺たちは攻めカルタだぜ?」とかイキってた太一には若干赤面したが!!
覚醒千早が勝てなかった女王に連勝してる化け物だぞ!!そいつ!!!結局、作中無敗。
もはや穏やかなチャック・ノリス。
本気出させちゃダメな相手だな!!
それでも全てが予定調和というわけでもない。
特に女王との決戦中にスーパーサイヤ人2ばりに覚醒した千早には掛け値なしで鳥肌が立った。「ちはやふる」の意味がわかったとき、観客は頭を縦に振らざるを得ない。
「競技かるた」というマイナースポーツをここまで真っ当に傑作たらしめたことには賞賛する他ない。
本作は決して海千山千のかったるい学園ラブコメではない。
観賞後にはむしろ『アイシールド21』に近いな!!と思うほどに!!!『アイシールド21』
個人的には『SLAM DUNK』と並んでスポーツ漫画のNo.1。
「アメフト」というマイナースポーツ、個性的なチームメイト、そして熱い展開と多々連想する部分が多い。
未読なら今すぐ読もう!!!
男泣き必至な超傑作だ!!!
そういや阿含が「競技かるた」に参戦したら凄そうだな!金剛阿含。酒に喧嘩に女まみれな高校生。
しかし一切の努力なしで日本トップクラスに君臨するほどの天性の才能を持つ。
さらにその頭脳すら世界ランク。
曰く「天賦の超人」な漢。
無尽蔵なスタミナとカンストレベルの反射神経「神速のインパルス」により凡人を捻り潰すのが大好き。
掛け値なしでやべェやつ。
閑話休題。
将棋星人な羽生善治曰く「将棋にも思考の最中、時速300kmの世界がある」とのことだが
そんな熱い闘いが連発する本作。
邦画や恋愛ものを敬遠している俺のような人にこそぜひ見てほしい。
実際俺は完結篇の『-結び-』が待ち遠しくて仕方ない程にハマってるし!
家デートでもなんでもいいから観よう!!!
清々しいほどの青春に打ちのめされろ!!
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