孤高の青春再起クライムサスペンスミュージカルカーアクション。
エドガー・ライトのやりたいこと、全部盛り。
監督ファンは死んでも観よう!
予告でピンときたら観よう!
とにかく観よう!!
未だに新進気鋭のイメージが抜けない英国のオタ監督。エドガー・ライト。ノリいいナイスガイ。
こんな風貌でも頭ん中はオタクそのもの。
映画好きなら一度はハマるその作風。
代表作は「スリー・フレーバー・コルネット」3部作だろう。上からそれぞれ
『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』
『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』
それぞれ話が繋がっているわけではないものの
監督&主演タッグは共通。
ひとつ気に入れば他のもストライクなはず。
ご多聞に漏れずどれも大好きな作品だ。
映画界にも固定ファンは多々いるらしいが、そんなヤリ手をお偉いさん方が放っておくわけがない。
数年前になるが『アントマン』の監督に大抜擢。
若手だろうがベテランだろうが有能なら使う!というMARVELらしさ全開の人選であった。
個人的にも「エドガー・ライト×MARVEL」という黄金方程式を楽しみにしていた…のだが。
製作上の意見の不一致で降板という憂き目に合ってしまった。
それでも完成した『アントマン』は素晴らしい出来。
傑作しかないMCUの中でもキラリと光る大傑作であった。
聞くところによればエドガー発のいくつかのアイデアも採用されている、とのこと。
複雑ながらも作品に罪はない。
それに好きなものは好きだし!
その後の『シビル・ウォー』での一点起用でも素晴らしいスパイスとして大いに盛り上げてくれた。ノリノリジャイアントマン。
もはや嫌う理由もない。
エドガー・ライト本人も「シビルウォーで一番輝いていたのはアントマンだった」と言っているくらいだ。
ようやく胸を張って俺も大好きと言える気がした。
まぁ『アントマン』単体作に関しては
「元カノのセックスを見るようなものだ」
とバッサリ切り捨ててはいるが!!
そんなトラブルもあったせいか最新作である本作は大手映画会社の援助をガン無視。
やりたいようにやりきったエドガー節フルスロットルな渾身の一作となった。
もちろんつまらないわけがない。
ありがたいことにまたまた試写会が当たった。
そして度肝を抜かれた。
何度目だ!!この流れ!!
とにかく一から十までブレることない大傑作であった。
そんなアクセル全開なあらすじ。
なにやら物騒な集団。それもそのはず、銀行強盗御一行。
そしてその運転手こそが本作の主人公。ベイビー。
凄腕の若き天才ドライバー。
のっけから音楽にノリノリ。
そしてそのボスにしてベイビーの雇用主。ドク。
冷徹なプロフェッショナルでありメンバーは作戦ごとに総入れ替えする用意周到さを兼ね備える。
しかしベイビーがいると必ず仕事が成功するため「幸運のお守り」として起用し続ける人間らしさも。
暴力を嫌うなど裏社会に全く似つかわしくないベイビーがなぜこんなイリーガルなバイトをしているかというと。
実はドクの高級車(麻薬輸送車)を盗んだ過去があり、その借金を返済するために雇われているらしい。
当然事情を知らない他の初参加メンバーは訝しむもののそこは実力至上主義な世界。
綿密な計画と大胆な機転、そして圧倒的なドライビングテクニックで今日も仕事は大成功するのであった。画像では説明できない素晴らしさ。
ド派手がすぎるなぁ!!
さらに嬉しいことにあと一回仕事を終えれば約束の返済額まで到達する。
ウキウキ気分で行きつけのカフェへと向かうベイビー。
そしてそこで運命的な出逢いをする。ウェイトレス。デボラ。
音楽好きという共通点も手伝って出会って5分で互いに一目惚れ。側から見ても「うまくいくな」感が凄い。
ちなみに演じるリリー・ジェームズは実写シンデレラなお方。羨ましいなぁ!!
そういえばハリー・ポッターの両親っぽい名前。
どうでもいいな!!
とにかくもうテンションが上がりに上がるベイビー。
そこにボスから召集がかかり「いっちょラストランといきますか!」と最後のお仕事へ挑む…が。
そのメンツには1人ヤベェやつがいた。バッツ。
演じるはジェイミー・フォックス。
奴隷やったり大統領やったり忙しいが今回の役どころはイかれた強盗のプロフェッショナル。
ファッションセンスからもひしひしと伝わってくるその狂気さ。
この男の登場により運命の歯車が狂い出す。
とはいえそこは孤高の天才ドライバー、ベイビー。
いろいろなハプニングも起きつつラストランを見事完走する。
なにはともあれ借金返済は終わった。
そして可愛い彼女もできた。
まさに人生の頂点だった。
報酬でもある大金で強盗仲間から聞き齧ったお洒落なレストランへしけこむベイビーとデボラであった。いい背伸び感。
しかしそんな幸せは長くは続かない。
会計を済ませて店を出ようとすると店員さんから「あちらの方から御代はいただいています」との一言が。
嫌な予感がしつつも振り返るとそこにはあのボスがいた。
そして裏路地に誘われ「借金返済は確かに終わった。だから今回からは対等な仲間として強盗しろ」とのパワハラ全開な要求をされる。
「幸運のお守り」そして天才ドライバーとしての腕を買ってのことだ。
しかし裏社会に嫌気がさしているベイビーは当然断るも
「大切な人のことをよく考えろ」
「そういえばあの彼女は可愛いなぁ??」
などと面倒な脅迫をかけてくる。無下にすることもできず渋々承諾してしまうベイビーであった。
さらに面倒事は続く。
なんと今回のメンツはオープニングの強盗で一緒になったバカップル、そしてバッツだった。もうベイビーのMPはゼロだった。
それでも愛しの彼女との自由を夢見てハンドルを握る決意を固める。
そんな気も知らないドクに命じられ他のメンバーと武器の売買に出向くことになる。
「商品」を仕入れてくるだけの簡単なお仕事…のはずだった。
しかしここでバッツがやらかす。なんと唐突に銃撃戦をおっ始める!!
否応なしに対応するバカップル!!
そして相手の武器商人たち!!
逃げ隠れするベイビー!!!
先手をとったこともありなんなく全員殺すのだが、理由を尋ねられて「こいつらは警察だもん」の一点張りのバッツ。
穏便に済ませたいベイビーからしたら最悪の一言だ。
しかもそんな最悪の雰囲気はさらに加速する。
よりにもよってアジトに戻る途中で「腹が減ったなぁ!!」などと言い出すバッツ。
そして指定した店はあろうことかデボラの店。
「あの店は嫌いだ」となんとか入店拒否するベイビーだが見た目通りに天邪鬼なバッツは
「それなら入らなきゃなぁ!!?」
と強引に入店する!!
いるよな!!こういうやつ!!!
当然店ではデボラが働いている。
ベイビーの突然の来店に驚きつつ喜ぶデボラ。
しかしいつもと違いヤンキーバカップル&ヤバそうな黒人という濃すぎるメンツと一緒なために訝しむ。「えっ…?」なデボラ。
もうこれ以上事を荒げたくないベイビーだが
そんなことは御構い無しなのがバッツ。
手始めに大声でバカップルのことをしこたまいじり倒す。「お前は子持ちだったらしいなぁ?」
「だが借金に耐えきれず3つのことに逃げた」
「女、ドラッグ、セックス、強盗だ」
「…おっと4つだったか?ギャハハ!!」
それだけならまだ良かったのだが、散々空気の読めない発言をリピートしまくりベイビーとデボラの仲まで冷えっ冷えに!!!ここまで対照的なのもすごい。
挙句には「会計」と称しデボラに鉛玉をブチ込もうとする始末。
どんだけクズなんだこいつ!!
さすがにそれはベイビーが許さず一触即発な雰囲気に。
ヘラヘラとそれは許すバッツだった。
とにかくドクの元に戻り警察の一件を問いただすも
「そうだけど?なにしてくれてんの?」とこちらもこちらで一点張り。
もはや一触即発が加速し絶対零度以下に落ちる。
どこまで落とせば気が済むのか!!
果たしてこんな状況で強盗は成功するのか?
いけ好かねぇ仲間達はどうするのか?!!
そしてベイビーとデボラの行く末は!!?
湧き上がる感情をハンドルを握る手とアクセルを踏む足に込めて。
今、全てにケリをつけるべく。ベイビーの人生を賭けたラストランがスタートする!!
…というもの。
巷ではカーアクション版『ラ・ラ・ランド』と揶揄される本作。
印象的な音楽映画で男女のあれこれが主軸ならどうしたって言いたくなるのが性ってもんだろう。
ちなみに俺はまだ観てないが!
しかし主観でいえば『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に近いと感じた。
主人公の音楽への敬意。
80年代感溢れる選曲の数々。
ミュージカル映画と錯覚するほどの演出。
これはむしろ『GotG』のオープニングシーンが2時間ぶっ通しで続くといった方が正しい。ノリノリクリプラ。
周りの騒音が主人公の聞いている音楽とリンクする快感。
MVな画面のつくり。サントラ映画という点。
上記したようにいろいろあったエドガー・ライトとMARVEL映画が同じ方向性になってしまったのは皮肉とも言えるかもしれない。
しかしどちらも最高にCoolであることに変わりはない。
それどころか本作の劇中歌は30曲にも及び、映画のサントラとしては異例の2枚組。
『GotG』以上にノリノリに比喩抜きでずっとなにかしらの音楽がかかった状態で突き進む。
それもベイビーの心情とこれ以上なくリンクしているために直感的にも理解しやすくなる相乗効果もある。
そしてそれに負けることのないいくつもの要素。
例えばストーリーだが、話で言えばそこまで難しいものでもない。
強盗→計画→強盗→計画→最終決戦という簡素なものだ。
しかしそこにロマンスやサスペンス、そしてベイビーの成長をしっかりと描くことで1秒たりとも目が離せない。
とりわけキャラの魅力が爆発しているのも本作の特長だ。
ひとりずつ見ていこうかと思う。
ベイビー。
若き天才ドライバー。
寡黙で内気。それでもやるときはやる。
幼少期に両親を交通事故で失う。
そして自らも耳鳴りが止まないという後遺症を負う。
それをかき消すためにも音楽は必須。
そのために音楽への敬意は本物。
その日のテンションによって音楽プレイヤーを変えるほど。
人の声を録音してミックスし音楽につくりあげるという変わった趣味がある。
アニメ、音楽、映画、他人の台詞を引用して喋る癖がある。
ちなみに喧嘩はからっきし。
デボラ。
ベイビー行きつけのカフェの店員。
一言でいえば男の理想系女子。
ベイビーをただのドライバーと思っている。
しかし終盤でその正体を知ることになる。
それでもその行いではなく内面を見てくれるこの上ないできた女の子。
なにより可愛い。
ドク。
ベイビーの雇い主にしてプロの強盗。
冷酷無比だがベイビーのことは気に入ってる模様。
終盤ではその隠れた愛情と漢気が大爆発する。
甥っ子(8歳)にも英才教育を施している。
そして順調という恐ろしさ。
バッツ。
本作の影の主役。
空気が読めないというか読む気がない。
買い物=店員に鉛玉をブチ込むことと思ってるヤバいやつ。
とはいえその腕前と危機察知能力は一流。
実はいい人なのか…と思いきや終盤まで清々しいほどにストレートなドクズ。もはや尊敬。
バディ&モニカ。
ヤク中強盗バカップル。
本作最初の強盗にてベイビーと知り合う。
ラストの強盗にも参加。
最初はその風貌などからベイビーをからかうも次第に信頼を寄せる。
しかしクズはクズ。わかりやすい。
さらにバディはラスボスとして立ちはだかる。
もうあれだ、全方位クズばっかだな!!
まぁクライム映画だしそれは仕方ないにしても
しかしその実、ダメ人間達が立ち上がる再起映画とも言える。
ベイビーは子どもの頃から車泥棒をしていた過去がある。
両親を失うキッカケとなった自動車が憎かったのかもしれない。
その結果、自身の運転の腕前が磨かれたのは皮肉ともいえる。
しかし愛する人に出逢い、その人を守るために真の漢として成長する。
最終決戦にて。
手筈通りに裏路地に車を停め、強盗してくるバッツとバカップルを待つことになるベイビー。
しかしもう我慢ができなくなったのか、メンバーが乗り込んできてもアクセルは一切踏まないという反抗期っぷりを見せる。
助手席に乗ったバッツに銃を突きつけられ
「車を出せ!!」
と言われようものなら
「お望み通りに!!」
とばかりに急発進!!!
前に停まっていた資材剥き出しのトラックに突っ込む!!!
結果、その資材に貫かれバッツ、即死。
バディに「なにやってんだ?!」と問われるも
「車出せって言ったろ?」
と悪びれもなく吐き捨てる始末。
あれ?!キャラ変わったな!!でもいいぞ!!
そして流れるように強盗の騒ぎで駆けつけた警察達と銃撃戦が開幕する。
バディとモニカは必死で撃ちまくる!
ベイビーは颯爽とその場を後にする!
ここから初の自らの脚による逃走劇、スタート!そして意外にも身体能力が高いベイビー。
街中をパルクールで跳び回る。
まさか自宅にてノリノリでダンスを踊ってたのが伏線だったとは!!
「ダンス万能説」ここに極まれり。
ラストには正面から突っ込んでくるバディの車をハードル競争のノリで躱すほどまでになる。ベイビーはダンスやってっから!
この「自らの脚で走り、話し言葉も引用ではなく自らの言いたいことを言う」という成長具合。
テンション上がるなぁ!!
さらにその漢気は感染する。
デボラを連れて通りすがりのヤンキーから車をなんなく強奪しドクの元へ向かうベイビー。目の据わり方が別人。
目的は音楽にハマるきっかけとなった母親の歌声が録音されたテープだ。
しかしそこにも追っ手が迫る。
「もう俺には関係ない」と無情にも言い放つドクだが、ベイビーとデボラを振り返りとある一大決心をする。
「俺が引き付ける…お前らは逃げろ」
まさかの「ここは任せて先に行け」パターン、発動!!
「えっ、なにがあったんだ!!?」という観客の声もそこそこに
ショットガンを手に取り立ちはだかるドク。ドクの漢気、ストップ高!!
なぜドクのやる気スイッチが急にONになったかは正直わからない。
でも冷酷無比な男に情が湧いてもいいじゃないか!!
ここにきてまさかの疑似父子ものにハンドルを切るこのやりたい放題さ。
ラストでの漢気大爆発はエドガー・ライトお得意の手法ではあるが、本作は音楽の効果もありアガりにアガる。
そういえば
「ダメ人間が頑張る」
「主人公の音楽好きの原点は母親」
「疑似父子もの」
という点でも『GotG』と同ベクトルだ。
とにかく全篇お洒落さしかないミュージカルの体を成しているハイテンションムービー。
既に公開されている海外では評価がうなぎのぼりなのも頷ける。
ちなみにここからは俺の悪い癖でもあるのだが
カーチェイスものだとどうしてもステイサムの顔がよぎってしまう。
本作においても「ステイサムなら…」という言葉が次から次へと脳内を掠めたのも事実だ。
ステイサムなら強盗仲間だろうが女だろうが煽られた瞬間にブチのめすだろうし
数の暴力は誤差。
銃撃戦が起きようものなら率先して撃ち殺しまくるだろう。
殺意100%ステイサム。
ラストの逃走シーンにも緊迫感は一切なかったはずだ。
というかそもそも逃げなさそうだが!!
奇襲ステイサム。
刑務所に入ることもないだろうし、万が一入ったとしても秒で脱獄しかねない。
脱獄ステイサム。
書いてて思ったがまぁこれだとメカニックなトランスポーターだな!!
ステイサムが今作を担当したら。ただの4コマ漫画だ!!
それでも終盤の漢気パンデミックは四捨五入すれば『エクスペンダブルズ』と言って差し支えないほどの素晴らしさ。
この『ラ・ラ・ランド』から『エクスペンダブルズ』へ、というアクセルベタ踏みからのドリフトしまくる展開はむしろ嬉しい大誤算といえよう。
とにかくどこを切っても傑作な本作。
ぜひぜひ友人同士でもデートでも見てほしい最高の映画だ。
しかし公開日は8/19。
以前ブログでも取り上げたように今年の夏は大作映画の目白押し。
騎士王vs海賊王。夏休み頂上決戦!! - 高速回転する方舟の片隅で。
どうしても宣伝の派手さなどでは引けを取ってしまいがちだが
傑作度合いでは負けず劣らず。
というか油断したら今夏一になる可能性すら秘めている超傑作。
監督のファンはもちろん、映画好き、音楽好きには問答無用でオススメだ。
「必見」とはまさにこのこと。
正座して観よう!!
少しでも引っかかれば是非な予告↓
余談だが最初の強盗のみ参加するグリフというキャラがいる。
基本メイン以外は割と使い捨てな強盗が多い中、演じるは現役「パニッシャー」ことジョン・バーンサル。
期待度、120%!!
中の人のイメージ的に絶対再登場する…と思ってたのだが
一切そんなことはなかった。
ここにきてまさかの使い捨て。
「もう会わなかったら死んだと思ってくれ」とはグリフ本人談だがその通りなのか、もしや!!
どこまでMARVELが憎い!
エドガー・ライト!!!
必見とは程遠いtwitter↓
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